TOP ▲

GCDF試験対策 2016年1-2月 by itcore

目次

実技試験対策の推奨手順

試験内容を理解する。

出題範囲・形式・合格率について(GCDFサイト)

試験時間約30分
出題範囲ヘルピング(カウンセリング)スキルの確認
出題形式ロールプレイ形式
(15分間のキャリアカウンセリングと振返り)

クライアント役と採点官が控えている個室へ入り、ロールプレイを行い、続けてその後に採点官による口頭試問を行います。ロールプレイと口頭試問の内容をもとに合否が決定されます。

口頭試問は、厚生労働省の指針に基づいた3問程度です。自己評価(良かった点・改善したい点)、クライアント役が抱えている問題の把握度合いや今後の支援、に関する質問などです。
合格基準 関係構築及び後半過程ができる方向であれば合格
(複数の採点官が評価し、判定する)

合格に向けて

・実技の合格率は50%程度であるが、再チャレンジの人を考慮すると、現役合格は20~30%程度と思われる。甘く考えずに、しっかり対策をとる。
・テキスト1のP33~P109をよく読む。
・試験の出題範囲は「スキルの確認」である。各種のカウンセリングスキルを「実際に使い」採点官に「見てもらう」必要がある。
・まずは、「受容的態度、理解的態度、誠実な態度」の3つの基本的態度ができているかが最重要。一人の人間としてクライアントにどう接するかという心構えから見直す必要がある。普段、人をリードする立場にある人は、「初心に戻る、自分の価値判断を入れずに素直に受け入れる、教えてもらう」といったような状態になれることを訓練する。
・そしてテクニック的なスキルとして「傾聴技法 4つの最小単位のスキル」をうまく使いこなせる必要がある。a.明確化 b.感情反映 c.言い換え d.要約
・座り方、視線、話し方のトーン、沈黙に耐えるなども大切なポイント。
・とにかく関係構築に集中して、クライアントが主体的に話してくれる状態を目指す。

目指すこと ・クライアントの気持ちを理解して返しているか。
・クライアントの隠れた問題を聞き出せているか。
・クライアントが主体的に話をできているか。
・この後の進め方をイメージできているか。
やってはいけないこと ・カウンセラーの質問攻めになっていないか。
・カウンセラーが話しすぎていないか。
・カウンセラーの意見を押し付けていないか。
・カウンセラーが答えを誘導していないか。
・単なるおうむ返しになっていないか。
・安易に同感・同意していないか。
留意点 ・座り方・視線・声のトーン・応答のペースに気を付ける。
・3つの基本的態度をとる。受容的態度、理解的態度、誠実な態度。
・傾聴力スキルを発揮して、クライアントに主体的に話してもらう。
・沈黙に耐えて、クライアントの様子をよく見て、何か話出しそうだったら我慢強く待つ。
・沈黙で完全に止まってしまったら、要約スキルを発揮する。

重要ポイント ・関係構築に集中する。(問題把握のことはあまり考えない)
・受容的態度、理解的態度、誠実な態度を体全体で示す。(大小のうなずきなど)
・ゆっくり丁寧に言葉を返す。クライアントの話のあとに一呼吸置いてから返す。
・必ずクライアント主導で会話を進めるようにする。カウンセラーから新しい質問をしない。
・クライアントの話しを深く理解するための質問は良い。出来るだけオープンクエッションで。
・言い換えや感情の確認などの質問をする。「こういうことですね?」「こう思われたのですね?」
・とにかく、クライアントの話しに対して、「どう返すか」、ということに努力する。
・「で、どうされましたか」「ということはXXXなんですね」など、
 クライアントに話しをしてもらうための自分なりの話術を持つ。
・クライアントが話してくれた内容について、小さな確認を繰り返すイメージか。
・その人(クライアント)の唯一の理解者になる。
・クライアントの助けになることに全身全霊を傾ける。

合格者の振返り、アドバイス ・ゆっくりと丁寧に返答しました。あと“何に対して、どう思っている”かを思い切ってぶつけたと思います。
・クライアントからは感情的な言葉はなかったと思います(「頭にくる」とか「イライラする」とかは無く、ただ淡々と状況を話すタイプ)なので、こちらから相手の気持ちを付けたしました。
・入場する時に、試験と思わず、“本当に悩んでいる人が助けを求めてきた”と思うと周りを気にせず、クライアントに集中できる気がします。
・クライアントが言った事にすぐに応答するのではなく、一度飲みこんでから話すようしました。したがって、こちらが返答するのに少し時間をとったように思います。
・第一応答はすごく大切にしていました。同じ事を言っても丁寧に返しました。そして“何がどうだ”を付け加えました。“何がどうだ”は“(クライアント)さんは(クライアントが言った事)を非常に(気持ち)と思っているですね”としました。
・ぐるぐると同じところを回りだしたので、10分過ぎくらいから質問を繰り出しました。
・その際にも、返答に対して「何がどうだ」で返すようにし、質問のしっぱなしにならないように気をつけました。
・「ちょっと~なんですね」と自分が言い出したので、あわてて「ちょっと~」は言わないようにしました。
・うなずきは”小さいうなずき”と”大げさなうなずき”を入れました。
・控室に入る前にYouTubeでQUEEN“I was born to love you”を聞いて気持ちを盛り上げました。
・YouTubeで“テレホン身の上相談”を聞いて第一応答を練習しました。相談者の部分だけ、聞いては止めて返答の繰り返し。(注:ついつい最後まで聞いてしまいそうですが、時間の無駄で、気持ちが暗くなります。YouTubeの履歴をそのままにしていると、おすすめが何故か全て衝撃の映像になり、気分が悪くなります)
・ゆっくりと丁寧に返答しました。あと“何に対して、どう思っている”かを思い切ってぶつけたと思います。(XXXの態度に対してイライラを感じられるのですね)(自分のXXXとしての理想をもっているのですね)(XXXのスタイルを持っているわけですね)(XXXに対して理解を示そうとする態度をしているわけですね)(今後こういったXXXをしていると、業績が落ちるかもしれないという不安をお持ちなのですね)
・クライアントの話を自分がクライアントだったらという視点で聞いて気持ちをとにかく言葉で返した。
・私達は素人も同然ですから、カウンセリングするという態度でなく、一緒に話を聞いて、ふんふんと頷くと言うようなスタンスがいいのではないかな、と思っています。上手く言えませんけれど、素の自分を出して話をするといいような感じがします。
・兎に角、必死でしたので、ほとんど自分が返した言葉を思い出せませんが、出来る限り”それで、どうしたんですか?”とか”で、どうなさったんですか?”みたいな言葉を使ったような気がします。
・途中で会話が途切れた時(2回)は、こちらから話さず、クライアントが喋りだす迄待っていました。ちょっと勇気が要りましたけれど、この人は話し出す、という確信はありました。
・カウンセラーの第一応答は何としてでもオウム返しをしないこと
・常にクライアントに話の主導権を持たせること。→若干堂々巡りになってでも、話の話題は変えず、感情で返したり、深堀りをしたり、そこまでの復習をして我慢しました。
・自分や人の録音データや逐語を繰り返して、どんな返しがあるか自分の引き出しを増やせるようにしました。逐語を見直したり、録音を聞き直して、違う返し方を考えてみると良いと思います。
・会話の話題はクライアントが変えるまで辛抱。(関係構築中)後半5分くらいで初めて解禁のイメージです。
・8割クライアントに話してもらい、クライアントが言わんとしてることを繰り返し確認していく。
・12分経過したところで、これまでの話をサマリーを入れて、今後の進め方を確認して、ひたすら聞いた話を「具体的に教えて」を繰り返しました。
・最初すごく緊張してしまい、第一応答からほぼおうむ返しで、自分の言葉で返せずでした。ただ、応答していく内に落ち着き、過ぎたことは忘れようと、その場でうまく切り替えられたのが結果的によかったのかなと思います。
・私は15分関係構築を続けるスタンスで臨みました。なので、感情は深堀できた気がしますが、状況はあまり把握できていません。とにかく感情を追って、CLに気持ちを吐き出してもらう様に意識しました。
・残り2、3分でCor意見を入れて一気に自分の意見を言った感じです。問題の確認はカウンセリング内で出来なかったので、質疑応答でできるだけ具体的に詳しく、説明しました。
・問題把握が進まなくても、関係構築ができていれば大丈夫です!
・後は、共感のリアクションを大きくする!親身に聞いているというアピール!
・傾聴する姿勢(うなづき、相槌)
・できる限りクライアントに話をさせる
・クライアントが言ったことは、丁寧に返す
・特に気持ちの部分は、漏れなくおさえて返す(私は上手く言い換えることができていなかったと思いますが、オウム返しになってしまっても返していました。)
・この試験はGCDFで習得すべき基本を理解して実践できているかを確認するためのものなので、できている、できていないの客観的な評価の軸があるのではないかと思います。(それがないとクライアントとカウンセラーの相性で合否になってしまうので)
うまくできたこと ・感情に寄り添いながらクライアントが話やす状況を作ることができた。
・素直に答える事を心がけていました。自分を飾ったり、卑下したりしないように回答しようと思っていました。
・感情表現を都度言って関係構築がスムーズだった。
・CLが現状と今後(具体的に説明しました)に対して不安や焦燥感を強く持っていたので、その感情に寄り添うことを意識した。
・〇〇〇なども詳しくお話いただけたので、CLの思いの部分は理解し、寄り添ことができたと思う。
・クライアントが話してくれたことを丁寧に返すことができ、信頼関係の構築はできた。
改善点 ・話が展開できず、本来のクライアントの問題を掴み切れていない。と自信をもって言いましたが、実は試験が始まる前から決めていたセリフだったのであっていたかは不明です。(当日は振り返って考えられないと思い、準備しておきました。)
・まだまだクライアントの気持ちや問題点を十分把握していないと思うので、クライアントの立場に立って考え関係構築を深め、その中で、問題把握していきたい
・クライアントと一緒に問題解決ではなく、問題特定していく
・後半で同じような質問を何度かしてしまった。
・何が問題なのかをきちんと捉えられるような、切り込んだ質問が足りなかったと思う。
・クライアントの中でまだ明確になっていない問題について、整理や深堀することができなかった。
今後の進め方 ・XXXの仕事は無理ではないか?という意見に対して、XXXの仕事の求人をあまり見ていないので、探してもらう。
・クライアントは不安からどうにかしたいことは、自己認識してるので、不安は何から起因してるか自己受容するところを支援していきたい。
・まずクライアント言っていることが思い込みなのかどうか、客観的な立場で考え、それからクライアントの現在のスキルや経験等を整理して、転職すべきかを一緒に考えていきたい。

□クライアントにペースを合わせる
□気持ちに対する深堀の質問はしても良い
□何についてどう思っているかを捉えて返す

■クライアント主導
■とにかく傾聴
〈クライアントを理解し、その理解を返そうと努めること/うなづき 相づち〉
■クライアントが言ったこと(何についてどうだ)は、まめに返す
〈質問するならクライアントが言ったことを返してから〉
■最初は問題解決なんてしてもらわなくてもいい。今の状況と気持ちをわかってほしい。
■クライアントとカウンセラー(自分)に対する客観的な視点

●カウンセラーの返しは短く!
(長いとクライアントが、それを理解しようとして、自分のことのほうに意識が行きにくくなってしまう。長い返しにはカウンセラーが評価した内容の言葉が紛れ込んでしまう)
●事実/事象の探索に終始しない!ピンときたり、間違っても"その場で"深掘りする!
(自分の悪い癖なんですが、どこか一番気になっているポイントか、いろいろ探索&情報収集してしまい、それぞれが本当の気持ちの会話になってない)

「何についてでどうだ。」フレームについて


「○○」について「■■」だ。
フレームに入れていくように、常に頭でパズルを組み合わせていく感じです。
クライアントの「知・情・意」を察知して、「○○」か「■■」フレーズに入れます。

例1)
CL:転職しようかどうか迷っているんです。

この場合「■■」は「迷っている」になります。
では迷う理由「○○」は??
 ↓ ↓ ↓ ↓
質問例
Cor:転職について迷うようなことがおありなんですね。
  どういったことで迷われているんですか?

Clの迷う理由は、いくつも組み合わさって「迷い」になっていると思います。
「△」+「□」+「●」=迷い
であって、「△」がわかってもそれ以外も聞き出せると、「迷い」の感情が明確化していきます。(Clの自己理解も進む)


例2)
CL:職場の雰囲気が悪くて、転職しようか迷っているんです。

「○○」が明確になっている場合の深堀り
質問例
⇒Cor:職場の雰囲気が悪くて迷っているんですね。
   どんな職場の雰囲気なんですか?
この様に、○○の明確化をする質問も有効だと思います。

例3)
Cl:35歳定年説というのがあって、35歳になったのでどうすれば良いのかと思ってまして。

「どうすれば良いかわからない」は感情にもなりますが、あまりにもフワッとしているので、感情を具体化することも方法かもしれません。
 ↓ ↓ ↓ ↓

「○○」に「どうすれば良いかわからない」を入れる。
「■■」は?
この場合は、相手の感情を具体化させるために、ひとまずぶつけてみるのも方法です。
 ↓ ↓ ↓ ↓
質問例①
Cor:どうすれば良いかわからず迷っていらっしゃるんですね。
⇒CL:そうなんです。迷っているんです。
⇒Cor:具体的にどういったことで迷っていらっしゃるんですか?
という風に流れていったりします。

質問例② 感情がはずれた場合
Cor:どうすれば良いかわからず困っていらっしゃるんですね。
⇒Cl:いや、、困っているわけではなくて、ある意味チャンスだとも思っている
んです。
⇒Cor:チャンスだとも思われているんですね。どんなことがチャンスだと思われ
ているんですか?
という風に、次の話に展開することもありますので、感情をぶつけてみることが
大切だと思っています。

1.何に対してどう思っているか確認する。(感情や気持ち)
○○に対して■■なんですね。

○○ 会社、上司、部下、職場、今の仕事、仕事がないこと、今後の自分、将来、リストラされたこと
■■ 不安、不満、納得いかない、つらい、不信感、裏切られた

2.合っていたら、そこを明確化し、原因を探り、言いたいことを聞き出していく。
■■について具体的に教えてもらえますか。具体的にどんな■■がありますか。
どんなきっかけで■■になったのですが。いつから■■になったのですか。
自分としてはどうしたいですか。

新たな対象○○に対する気持ちが出てきたら、1へ戻る。
ということは、○○に対して■■なんですね。

合格者は、返す話しの内容もさることながら、それ以前に、態度、姿勢、話し方、うなずき、相槌といった非言語スキルがとても高い。

参考図書

タイトル傾聴術 ひとりで磨ける”聴く”技術
著者古宮昇(こみやのぼる) 心理学博士 臨床心理士 2008年第1刷
目次

はじめに

 話し手の気持ちを話し手の身になって理解するとともに、「理解しています」ということを相手に伝えることが大切です。この本は、その力を伸ばすための本です。
 この本は理論ではなく、傾聴力を上げる”実践書”です。この本によって、傾聴の基礎トレーニングができます。
 私の実践経験から、特に理解が大切なところは重点的に説明し、また学び手の方々がつまづきやすいところは特に丁寧にお伝えします。

第1章 「傾聴」という援助方法について

1 悩んでいる人を支える方法について

2 傾聴がなぜ支えになるのか
(1)自分を表現したいという願い
(2)成長を求める命の力
 傾聴の基本には、「人は、適切な環境さえあればその人らしく成長していくのだ」という、人間の成長力への信頼があります。

3 傾聴に大切なこと
(1)自分のことのように想像しながら聴くこと
(2)話し手をそのまま尊重し受け入れること
(3)聴き手が自分自身に素直で、開かれていること
(4)聴き手の理解的で受容的な態度が話し手に伝わること

第2章 傾聴トレーニングの実践 - 応答の仕方

1 「ここで何を話せばいいですか」と尋ねる男性会社員
2 不登校で苦しむ女子中学生
3 引きこもりの息子をもつ母親
4 離婚したいという主婦
5 人生で何をしたいか分からないという女子大生
6 会社への不満を語るOL
7 リストラされ自宅も失い、自殺したいという元会社員の男性
8 就職の面接が不安だと訴えるニート(無職)の青年
9 息子が担任からいじめられて不登校になったと憤る母親

第3章 傾聴の実際

1 とにかく話し手を理解し、その理解を返そうと努めること
(1)「父に電話して、私に代わって説得して下さい」という少女
(2)「息子にお金を与えてもいいでしょうか」と言う母親

2 「間違えた!」と思ったとき

3 傾聴による対話の実際
(1)対話の実例
(2)対話についての解説

第4章 傾聴力をつけるために

1 傾聴力がつく学び方、つかない学び方
(1)私の個人的な経験から
(2)私のカウンセリング力を急激に上げたトレーニング法
①傾聴技術の指導を受けること
②個人スーパービジョンを受けること
③自分がカウンセリングを受けること
(3)人の役に立つ援助者になるために最も大切なこと
(4)カウンセリング技術を繰り返し練習し、指導を受けること
(5)個人スーパービジョンを受けること
(6)自分がカウンセリング(心理的療法)を受けること

2 傾聴のコツ
(1)傾聴の根本的な態度について
(2)話し手の気持ちをできるだけありありと想像しながら聴くこと
(3)相づちは多めに、大きめにしましょう
(4)口から息を吐きながら体を緩め、自分の体を感じながら聴く
(5)話し手のもつ解決力、成長力をみる態度を根本にもちながら傾聴する

おわりに

 自分がいることによって、世の中がより良い場所になる。あなたはそのために生まれてきたのだと思いませんか。
 是非一緒に、傷つきを癒やし、幸せを増やす仕事をしていきましょう。
 もっと学びたいあなたにお勧めの本を紹介します。

◯「ロジャーズが語る自己実現の道」カール・ロジャーズ著 2005年
 傾聴の基礎は、米国の臨床心理学者カール・ロジャーズの「来談者中心療法」にあります。この本は、彼の最も代表的な著書の一つで、人間のこころについて、心理的援助について、人間の変化と成長についての彼の見方、考え方を学ぶために、ぴったりの本です。

◯「やさしいカウンセリング講義 - もっと自分らしくなれる、純粋な癒しの関係を育むために」古宮昇著 2007年
 人が、より自分らしく成長し自由になれる人間関係とは、どのような人間関係なのかを易しく解き明かした本です。カール・ロジャーズの「来談者中心療法」の見方と、オーストリアの精神科医ジグムント・フロイトが創始した「精神分析理論」の見方をもとに、本書の基礎となる人間観をお伝えしています。
補足 この本はカウンセラー志望の人だけでなく、日常で身近な人の助けになりたいと思っている一般の人の役にも立てることを目指して書かれています。
いろいろな難しいケースに対して、複数の応答例を示し、それぞれの悪いところ良い所を解説しています。

タイトルプロカウンセラーが教える はじめての傾聴術 
著者古宮昇(こみやのぼる) 心理学博士 臨床心理士 2012年初版 2015年第11刷
目次

はじめに

 福祉、教育、医療など、人とかかわる職業に就いている多くの人々が、傾聴の大切さを痛感しています。本書は、傾聴を学びたいと思っている人がすぐに実践できるようにと、こだわってつくった本です。
 「人間の心のなりたち」や「傾聴を妨げる心の動き」について、わかりやすく具体的に説明しています。加えて、聴き手がしてしまいがちな悪い応答例と良い応答例を、その理由とともに解説しています。
 私は経験を通して、初学者のみなさんの悩みや理解しづらいことがわかってきました。それらについては、とくにポイントを押さえながらていねいに解説するように心がけました。

第1章 傾聴のデキる人は信頼される

1 信頼されるのは、話し上手よりも聴き上手
・みんな人から好かれたい
・聴き上手は人から好かれる

2 傾聴は人間関係を育てる
・援助する仕事における心の作用
・傾聴は援助の力を強化する

3 心を聴く、心で聴く
・「聞く」は言葉のやりとり
・「聴く」は心のやりとり

4 傾聴は家庭円満の秘訣
・夫婦間に生まれやすい心の溝
・何かをしながらでは、話を聴いたことにならない

5 傾聴はクレーム対応にも力を発揮する
・悪気がなくても売り言葉
・怒りの下には別の感情がある

6 勝ち負けにこだわると、聴けない
・話を聴くと、負けたと感じる
・話の流れを邪魔しない

7 傾聴されると、プラス思考が湧いてくる
・傾聴による変化は、連鎖しながら少しずつ起きる
・小さな心の変化が、人生を前向きにする
8 傾聴Q&A 傾聴から得られるプラスαのメリット

第2章 人間の心のなりたち

1 衝動が人を動かす
・みんなが心の中にもつ衝動
・衝動が追い求めるもの

2 自己実現を求める衝動は人を感動させる
・自己実現を求める衝動は目で見ることができる
・自己実現を求める衝動を目にすると心が揺さぶられる

3 いのちの本質は自己実現を求める衝動にある
・意味を求める衝動
・人の幸せを願う気持ち
・創造を求める衝動

4 リスクがなければ達成感は味わえない
・見過ごされる成功体験
・喜びが感じられる成功体験

5 失敗を避けつづけるのが最大の失敗
・チャレンジしなければ失敗はしない
・失敗しない人生が幸せとはかぎらない

6 無気力な子どもは自尊感情が低い
・自分を大切にできない子どもたちは他人を大切にできない
・いじめは自尊感情を低下させる

7 過保護な親は自尊感情が低い
・過保護は自信を奪い取る
・親の心の傷が子どもの成長の芽を摘み取る。

8 親の子育ての態度と、子どもの心
・親の反応を子どもは敏感に感じ取る
・言葉は通じなくても心は通じる

9 自己実現の衝動は、人生をエキサイティングなものにする
・娯楽は退屈な日々を紛らわす
・自己実現を求めてこそ人生に意味を感じられる

10 無条件の愛が子どもをせいちょうさせる
・人の心は、無条件の愛を激しく求める
・完璧が無理でも、無条件に愛を注ごう

11 無条件に愛してもらえないと、激しい憎悪が生まれる
・親を殺す子どもの心理
・依存心と独立心とのゆらぎが心の中の葛藤を生む

12 子どもの心の傷は二パターンの表れ方をする
・悪い子も良い子も親が育てる
・感情を押し殺すストレスは大きい

13 大人もみんな無条件の愛を求めている
・無条件の愛が心をつなぐ
・人は無条件の愛への衝動に反する行動をとる

14 表現を求める衝動が自分らしさをつくりあげる
・おしゃべりは手軽な自己表現
・表現することは楽しい

15 変わりたくない衝動は過去の傷が起こさせる
・自己表現は誰かを負かすことではない
・危険を感じると、無意識に衝動を抑えつける

16 幸せな人は、変化を怖れない
・不幸な人は不幸な生活にしがみつく
・防衛本能が変化の邪魔をする

17 必要以上に固執するのは変化を怖れる衝動の表れ
・やってみれば、良さを実感できることもある
・こだわる心の裏側には、自己無価値観がある

18 自分を認められない人は、他者からの承認を過剰に求める
・承認欲求は挑戦への動機づけ
・強すぎる承認欲求は変化を拒む

19 変わりたいVS変わりたくないという相反する衝動の闘い
・私たちは自己の可能性を開花させることを欲している
・成長の喜びは、変化への恐怖を乗り越えたとことにある

20 傾聴は、無条件の愛と表現を求める衝動を満たす
・適切な環境を与えれば、いのちも心も自然に育つ
・傾聴はいのちの力を活性化する

21 傾聴Q&A 自己実現を求める衝動は、本当にすべての人に備わっているのか!?
 赤ちゃんは、はいはいができるようになると、やがて立ち上がり、そして少しずつ歩き始めます。このように、人は可能性を追求し、それに向かっていく力が生まれながらにして内在しています。その力こそが、成長を求めつづける自己実現の衝動です。

第3章 傾聴の基本態度を身につける

1 話しても黙しても聴く
・沈黙も話し手のありのままの姿
・空白の時間は落ち着かない

2 興味をもって聴く
・しゃべらない人が聞き上手なわけではない
・心の壁を取り払い、ラクな気持ちで積極的に耳を傾ける

3 共感をもって聴く
・ひしひしありありと想像しながら聴く
・感情は自然に生まれる

4 話し手の経験を理解する
・経験はなくても、共感はできる
・同じ体験をしても、感じ方は人それぞれ
・想像力を磨くと、共感力が磨かれる

5 決めつけてはいけない
・感情には色や濃淡がある
・人は同時に矛盾した感情を持つ

6 自分の意見は横に置く
・賛成か反対かではなく、その結論に至った心理を探る
・ホンネに迫るアプローチ

7 ラベルを貼らない
・話し手について貼るラベル
・主観的なラベルは、共感的理解を妨げる

8 あれこれ詮索しない
・理解しようとすると、詮索したくなる
・事情聴取では、問題は解決しない

9 自分の話はしない
・自分のことを話しても”つながり感”は生まれない
・解決策を教えても、苦しみは解消しない

10 話せない気持ちを受け止める
・「何でも話して」はプレッシャー
・つらすぎる体験は抽象的になりやすい

11 無理に表現させようとしない
・話してラクになるとはかぎらない
・傾聴が危機的状況から救い出す

12 話し手を受け入れる
・わかってくれる人には話したい
・不信感には抵抗しない

13 辛抱強く、成長を待つ
・相手のペースを尊重する
・成長する力を信用する

14 傾聴Q&A 叱りたいときはどうすればいい

第4章 傾聴の実践テクニック

1 姿勢で伝える
・関心があることを体で示す
・視線は相手に向けても、目は見つめない

2 大きくうなずく
・うなずきが伝えるメッセージ
・うなずいてもらえると、ずっと話しやすくなる
・電話で話を聴くときこそ、あいづちが大切

3 感情に飲み込まれてはいけない
・共感と同感は違う
・共感と同情も違う

4 キーワードを繰り返す
・話をうながすパワフルなメッセージ
・オウム返しでは意味がない

5 受け答えは短く
・受け答えが長いと、話し手は話しづらい
・話の要点がつかめないと、話が長くなる

6 感情にフタをしているサインを見つける
・話の内容に合わない感情表現
・脈絡のない話はホンネではない

7 正論を振りかざさない
・正論が気持ちを疎外する
・クレーム対応には、心理面のケアが大事

8 質問の意味を考える
・質問の答えは求めていない
 理解されていないと感じると、話し手は聴き手に質問する
 質問は話し手の甘え欲求の表れであることも多い
・質問したくなる心の動き

9 質問の裏側にある気持ちを理解する
・質問に表現されている気持ち
・言葉にできない気持ちを理解していることを伝える

10 感情を受け止める
・会話には二つの機能がある
・話の内容によって受け答えの仕方が変わる
・共有世界を構築する受け答え

11 相手の感情の強さに合わせる
・感情の強さに共鳴する
・感情の強さがわからないときは
・当たり障りなく答える

12 話の流れに沿って質問する
・軽い会話は、質問をはさむと勢いがつく
・深刻な話題のときは、質問を減らす

13 繰り返される話も初めてのように聴く
・同じ話をする人に「その話は聞いた」は禁句
・同じ話を聴いているうちに、信頼が深まる

14 リラックスして聴く
・緊張感が伝わると、打ち解けた話はできない
・体をリラックスさせる呼吸法

15 緊張していることに気づく
・私たちは緊張の火種に囲まれている
・緊張は知らない内に許容範囲を超えてしまう

16 話を聴く時間の長さを区切る
・カウンセリングは、決められた時間の枠内で行う
・話し合いの中でルールを決める

17 秘密を守る
・秘密を守るのは難しい
・秘密を話したくなる心の動き

18 テクニックに頼らない
・教え方の上手な教師が、良い教師とはかぎらない
・傾聴の本質は寄り添う心にある
・聴き手は自分を偽らない

19 心がゆるむと話したくなる
・心も体も緊張をほぐすと元気になる
・わかってもらえると、もっと話したくなる

20 傾聴Q&A 大きな問題に直面したら

第5章 傾聴を妨げる心の動き

1 さまざまな心の防衛機制1 防衛機制の代表格「抑圧」
・心は自らを守るために、心をコントロールする
・「抑圧」は、くさいものにフタをしようとする心の動き

2 さまざまな心の防衛機制2 逃避、分離、反動形成
・「逃避」は消極的に身を守る
・「分離」は心と頭を切り離す
・反動形成」は反対の行動で本心をカモフラージュする

3 さまざまな心の防衛機制3 置き換え、補償、攻撃
・別のことで満足を得ようとする防衛機制
・欲求不満を解消する基本的な防衛機制

4 さまざまな心の防衛機制4 知性化、昇華、合理化
・道徳観に反する感情を認めてもらおうとする
・正当化して不安な気持ちを軽減させる防衛機制

5 さまざまな心の防衛機制5 同一視、投影
・自分と他人の感情を混同する防衛機制
・投影性同一視の対象は自分の姿

6 過去から現在へ心が転移する
・過去に抱いた気持ちを、目の前にいる人に懐く
・転移により起こる作用

7 聴き手の心の傷が傾聴を妨げる
・心の傷は共鳴しあう
・アップアップしている人に、他人の援助はできない

8 自分を救うための救世主願望
・治そうとするのは逆効果
・満たされない思いを満たすための救世主願望

9 ”あるべき姿”から心を解き放つ
・理想と現実は表裏一体
・縛りから解放されると、自分らしくなれる

10 傾聴Q&A いい仕事をするコンディションを整えるには、どうすればよいですか?

第6章 傾聴の紙上レッスン

1 人見知りだと言って、話そうとしない人の話を聴く

2 文句を並べ立てる人の話を聴く

3 一人でしゃべりまくる人の話を聴く

4 自分勝手な人の話を聴く

5 病気でもないのに、病気を苦にする人の話を聴く

6 泣きだしてしまった人の話を聴く

7 不登校の高校生の話を聴く

8 堂々巡りしてしまう話を聴く

9 傾聴Q&A 傾聴力を高めるには、どうすればいいの?  傾聴力を高めたいと願う人たちと、互いに話し手役、聴き手役になって一緒に練習をするとよいでしょう。
 練習後に、うなずきやあいづちの打ち方、応答の仕方について、お互いに感じたこと、気づいたことを話しあいましょう
 上手に傾聴しようということにとらわれないようにしましょう。大切なのは話し手を理解することであり、テクニックではないからです。
補足

タイトル共感的傾聴術 精神分析的に”聴く”力を高める 
著者古宮昇(こみやのぼる) 心理学博士 臨床心理士 2014年初版 2015年第2刷
目次

はじめに

 共感を目指したことのあるカウンセラーのほとんどが、「共感しているのにカウンセリングがうまくいかない」と悩んだことがあるでしょう。何を隠そう、わたしもその一人です!どれほど悩んだことか!
 「共感しているけど来談者が良くならない」のではなく、「共感できていないから来談者が良くなっていない」ということです。
 来談者の癒しと変容をうながすプロの共感とは、理論の助けを得て、来談者が言葉だけでは表現できない思いまでくみ取ることです。そんな共感にもとづく傾聴をするためには来談者の語りをどう聴き、どう見立てて、どう応答すればいいのか、それが、本書から得られる学びです。

第I章 精神分析的カウンセリングにおける共感

第1節 共感は来談者中心療法で、精神分析は冷たい鏡の態度?
1 来談者中心療法と精神分析

2 自由連想法
 フロイトは被分析者の連想の流れを妨げないことが重要だと悟りました(自由連想法)。来談者の語りを邪魔してしまうと、来談者は本当に語りたいことを語ることができなくなります。
 共感と無条件の受容は必ずセットで存在します。来談者のあり方を本当に共感的に理解すれば、来談者がなぜ一見すると”ヘン”な考えや行動をせざるを得ないかが良くわかります。

3 精神分析理論におけるこころの自己治癒力

4 無条件の受容(尊重)について

5 精神分析における共感のとらえられ方

6 感情の量ではなく、質を味わう

7 共感についてのコフートの考え

第2節 共感に関する脳科学の知見
1 ミラーニューロン

2 共感と身体感覚

3 カウンセリングにおける共感とミラーニューロン

4 訓練と経験による脳の変化

5 共感への二つの道

第II章 精神分析概念のおさらい

第1節 フロイトの性心理発達段階
1 5段階にわたる性心理的発達について

2 整理整頓と清潔さを求める価値観

3 親への抑圧された攻撃心が表れるとき

第2節 エディプス・コンプレックス
1 エディプス・コンプレックスとは

2 幼少期からの愛情飢餓がもたらす心理的苦悩

3 性衝動と強迫観念

第3節 抵抗
1 抵抗とは何か

2 抵抗の表れ方

3 何を避けるために抵抗しているのか

4 来談者とカウンセラーの関係において表れる抵抗

第4節 転移について
1 共感的に理解しづらい来談者

2 人間関係における苦しみの源
 人間関係が重荷や苦しみになるのは、自分ではそうとは気がつきませんが、過去に負ったまま癒えていないこころの傷が原因になっているものです。
 わたしたちは、他人の反応についてはそれが現実的ではないことが分かっても、自分自身の非現実的な見方、感情、行動については、現実的でないことに気づきにくいものです。

 子どものころに親の安定した無条件の愛をあまり実感できずに育った人ほど、恋人などに強く甘えるようになることがあります。
 このように、かつて親など重要な他者に対して感じた感情、欲求、考え、態度、行動、想像などを今の誰かに置き換える現象を、「転移」と呼びます。
3 転移反応を特に引き出しやすい人間関係

4 転移を正しく理解することの大切さ

第5節 転移反応の五つの特徴
1 転移反応の特徴(1) さまざまな意味で不適切な反応
2 転移反応の特徴(2) 感情の強さが非現実的で不適切
3 転移反応の特徴(3) 両価的
4 転移反応の特徴(4) 急変することがある
5 転移反応の特徴(5) 非現実的にかたくななことがある

第6節 転移抵抗
1 陰性転移による抵抗

2 陽性転移による抵抗

3 洞察めいた語りをする転移抵抗

4 来談者が自由に話せる関係の構築

5 わたしの転移抵抗の経験

第7節 転移治癒
1 転移治癒とは

2 転移治癒を生む理想化転移

3 カウンセリングにおける理想化転移

4 転移治癒も無意味とは限らない

第8節 転移から癒しと変容へ
1 来談者は独自の特徴的な転移反応を繰り返す

2 転移感情の扱い方

3 陰性転移の扱い方

4 逆転移

5 受容的で共感的な介入の例

第9節 転移の理解による来談者の苦しみへの共感
1 共感的に理解できない原因

2 非合理的・非現実的な反応を示す来談者の転位反応

3 自分自身の転移反応を共感的に理解する

第10節 カウンセラーは何をするのか?
1 カウンセラーが行うこと
 カウンセラーが行うことは、来談者が表現している重要なことをなるべく来談者の身になって共感的に理解し、その理解を言葉で返すことです。そのとき、来談者が表情、声の様子、言葉によって表現していることを、カウンセラーがあたかも自分のことのように、なるべくありありと想像して感じることが大切です。

2 来談者中心療法についての誤解

3 理論は共感のためにある

4 援助的な見立てとは何か

第III章 精神分析的傾聴カウンセリングの実際

事例1 カウンセラーに不信感を抱く男子学生
事例2 エディプス葛藤に苦悩する男子高校生
事例3 親との同一化に苦しむ男子高校教師
事例4 カウンセラーへの転移反応を起こす女子大学生
事例5 子どもに対する抑圧された怒りに悩む男子小学生の母親
事例6 息子を性的に求める思いに苦しむ男子小学生の母親
事例7 恋愛が続かないと悩む女性会社員
事例8 ”良い来談者”を演じようとする女性会社員
事例9 前カウンセラーからの転移反応を現カウンセラーに示す女性公務員

あとがき

 わたしは来談者に幸せになってほしいと願っています。しかし本当は、少なくともスピリチュアルな大局に立って眺めると、カウンセラーの努力は来談者の幸せのためではなく成長を助けるためのものなのでしょう。
 自分の今の考え方、やり方が必ずしもすべての人たちに最善だというわけではない、ということは分かりながら研鑽を続けていきたいと思っています。
補足

タイトルプロカウンセラーが教える 場面別 傾聴術レッスン 
著者古宮昇(こみやのぼる) 心理学博士 臨床心理士 2015年初版 2016年第2刷
目次

第1章 求められる傾聴力とは

1 傾聴は、人と人とをつなぐコミュニケーション
・コミュニケーションは心の距離を近づける
・コミュニケーションの二つの役割

2 相手の話を受け止めると、共有世界が築かれる
・情報は発信するよりキャッチする
・価値観を肯定されると、承認欲求が満たされる

3 人は好意を受けたら返そうとする
・心は自動的に反応する
・返報性が信頼関係を生む

4 プロの技もそのままでは使えない
・心理カウンセラーは傾聴の専門家
・話を聴く目的が異なる

5 傾聴が多くの問題を解決する
・問題解決へのさまざまな道
・一般的な傾聴の目的は、ニーズの見立て

6 役割認識が人間関係をかたちづくる
・自己開示がコミュニケーションを支える
・行為は役割認識によって方向づけられる

7 心理カウンセリングは非日常の空間で行われる
・シチュエーションが異なる
・時間を区切るときは配慮が求められる

8 チームで問題を解決する
・個人の能力よりも組織力
・チームワークに必要な力

9 相手が求めている自分の役割に意識を向ける
・注意を向けなければ、情報は受け取れない
・求められていることを意識する

10 人の本質を知れば、話の聴き方も変わる
・人には長所もあれば短所もある
・同じ人間はどこにもいない

11 人の心は移り変わる
・心はとらえどころがない
・心も成長・発達する

12 人間力を養う
・人間理解は傾聴の基礎知識
・話を聴いてもらいたい人になる

13 人間力は総合力
・人間力はさまざまな場面で力を発揮する
・人間関係はふだんの生活の中でつくられる

14 知識があれば理解力が深まる
・知識はもてる力を強化する
・専門性を高めることが傾聴力を強化する

15 想像力が傾聴力を向上させる
・経験のすき間を想像力が埋める
・思考を巡らせば、想像力が広がる

16 想像力を鍛える
・いろいろな立場に自分を置き換えてみる
・自分への問いかけが決め手

17 傾聴は、多くの場面で効力を発揮する
・傾聴から広がる世界
・場面別アプローチで豊かな想像力を

18 心を読み解くヒント 動機づけ

第2章 心理カウンセリングから学ぶ傾聴の基本

1 おおらかな気分で、耳を傾ける
・大きな心で話を聴く
・安らぎの場を提供する

2 あるがままに受け止める
・人は最もよい行動を選び取る
・正確や価値観は必要から生まれる

3 相手の世界観に共感する
・話し手を世界の中心に置く
・客観的事実よりも大切な主観的世界

4 共感するのは難しい
・行動の背景因子は相互に作用する
・変化もあるがままに受け止める
・事実と評価は混じりやすい

5 言葉より伝わるしぐさや態度
・話しやすい雰囲気は人がつくる
・言語を使わずに伝える

6 言葉にならない声を聴く
・ノンバーバルで受け取るメッセージ
・気持ちは服装にもあらわれる
・言葉にできない、さまざまな思い

7 相手の懐に入り込む
・相手の気分を読み取る
・相手の性格に合わせた応答をする

8 話をさえぎらない
・おしゃべりは楽しい
・話したい欲求を抑えなければ、話は聴けない

9 話を聴いていることを、相手に伝える
・受け取った玉を返す
・相づちが話を深める

10 キーワードを繰り返して、さらに話を深める
・キーワードを探す
・「わかる」は禁句

11 批判しない
・気持ちは大局にすり替わる
・価値観は絶対的なものではない

12 批判されても受け止める
・自他の区別をつける
・反論はしない

13 他者への非難に共感する
・非難の対象者を擁護してはいけない
・悪口を肯定しても受容にはならない

14 嘘をつかない
・自分の感情を抑えつけてはいけない
・否定的な気持ちになるわけ
・自分の感情を受け止めながら聴く

15 思いを察していいかえる
・話し手の思いを言語化する
・理解にズレが生じたら
・明確化は自己理解を深める

16 話を引き出す
・質問を使って話を聴く
・二種類の質問を使いこなす

17 上手に聴き出す
・具体例をあげて尋ねる
・閉じられた質問に置き換える

18 話し手の意図に合った質問をする
・質問のひと言では意図はつかめない
・質問は話の舵取り役

19 情報を集めようとしない
・話の内容に沿った質問をする
・好奇心で質問しない

20 論理性を求めない
・感情は論理的なものではない
・無理に筋の通る話にしない

21 情報提供で解決する問題もある
・提供する情報を選ぶ
・確かな情報を提供する

22 情報提供の一環としてアドバイスをする
・アドバイスを押しつけない
・信頼関係がないと反発を生む
・アドバイスの危険な罠

23 できないアドバイスもある
・情報提供では解決しない問題も多い
・答えを求めていない質問もある

24 その人の力をほめる
・ほめられると前向きになる
・心を健康に保つ

25 答えは一つではない
・言葉の裏側にある心に気づく
・答えを一緒に考える

26 責任を引き受けない
・社会規範が手助けをさせる
・個人の課題を他人は肩代わりできない
・自己決定に基づいた行動を支える

27 心を読み解くヒント パーソナリティの形成

第3章 傾聴場面にあらわれやすい心理

1 ホンネを隠す防衛機制
・傷つきたくないという本能の動き
・無意識に追いやる「抑圧」

2 つらい現実を回避しようとする
・現実から逃げる防衛機制
・現実を否定する防衛機制
・未熟な発達段階に戻る防衛機制

3 都合の悪いことは置き換えようとする
・言い訳し、正当化する防衛機制
・かわりのもので充足を得る防衛機制
・知識でカバーしようとする防衛機制

4 置き換えた欲求で高みを目指す
・かわりの行動で補おうとする防衛機制
・社会的価値の高い欲求にかえる防衛機制

5 他者と自分を重ねて心を安定させる
・他者の行動を取り入れる防衛機制
・自分の感情を相手に重ねる防衛機制

6 気まずい雰囲気が続くとき
・表面化されない抵抗もある
・理由を探って関係をつくりなおす

7 過去に生じた感情が転移する
・以前抱いた感情が向けられる
・マイナスの感情転移は抵抗と感じられる

8 転移した感情にふりまわされる逆転移
・転移に気づかず起こる逆転移
・解決していない問題が転移を生む

9 情報は無意識にゆがめられる
・世界に一つの認知フィルター
・柔軟な心で受け止める
・物事をゆがめる認知フィルター

10 くらべた対象で評価が変わる対比効果
・認知の仕方にはクセがある
・比較価値は本当の価値ではない

11 好みが価値を左右する
・真実をゆがめるハロー効果
・評価を甘くする寛大効果

12 ある一面が全体評価に結びつく
・わずかな経験で認知する過度の一般化
・単純にして理解する過度の単純化

13 欠点を際立たせるレッテル貼り
・人はレッテルを貼りたがる
・不安な心がレッテルを貼らせる

14 強迫観念に駆られるすべき思考
・すべき思考はやる気を奪う
・自分のものさしは他者には通用しない

15 受容を妨げる劣等感
・強い劣等感は問題を引き起こす
・劣等感から生まれる引き下げの心理

16 過度の甘えは依存を生む
・社会が甘えを許容する
・甘えは悪いことではない
・互いに依存し合う関係とは

17 メサイア・コンプレックスという落とし穴
・自分が救われたいから人を助ける
・自己中心的な動機による行いは不安定

18 対人援助職へと導く不健全な動機
・動機は仕事の質に影響する
・感情を処理するための動機
・不健全な動機に気づき修正する

19 仕事として感情を管理する
・対人援助職は感情労働
・感情規則に則して感情を管理する
・人としての感情を押し殺す

20 感情労働は心を消費する
・対人援助職に多いバーンアウト
・共感疲労にはサポートが必要

21 ストレスを理解しよう
・ストレスは毒にも薬にもなる
・人間関係はストレスのもとになりやすい

22 ストレスとうまくつきあう
・ふだんの生活の中でストレスを解消する
・職場でストレスを解消する

23 専門家に橋渡しをしたほうがいいとき
・誰が対応するのが良いかを適切に判断する
・未解決の問題を抱えたまま支援はできない

24 心を読み解くヒント 他者からの影響

第4章 知っておきたい場面別アプローチ

1 「あなたのせいだ」と責める人

2 いつも誰かの意見を求める人への対応

3 ホンネをしゃべれない人への対応

4 攻撃的な言葉を発する人への対応

5 白黒をはっきりつけたがる人への対応

6 同じ話を繰り返す高齢者への対応

7 体の痛みを訴える人への対応

8 うつ状態の人への対応

9 適応障害のある人への対応

10 アルコール依存者への対応

11 治療を受けたがらない人への対応

12 なかなか退院したがらない入院患者への対応

13 眠れないと訴える人への対応

14 甘えが強い人への対応

15 サービスを拒む人への対応

16 子育てに自信をなくした親への対応

17 クレームを言う保護者への対応

18 子どもを虐待する保護者への対応

19 万引きを繰り返す子どもへの対応

20 キレる子どもへの対応

21 いじめにあっている子どもへの対応

22 陰口を言う子どもへの対応

23 学校へ行きたがらない子どもへの対応

24 ひこもりの人への対応

25 無気力な学生への対応

26 有機溶剤を乱用する青少年への対応

27 摂食障害のある人への対応

28 強迫性障害のある人への対応

29 認知症高齢者への対応

30 認知症のある人の恋愛相談への対応

31 話し手から「好き」と打ち明けられたときの対応

32 ターミナル期を迎えた人への対応
補足

筆記試験対策の推奨手順

試験内容を理解する。

出題範囲・形式・合格率について(GCDFサイト)

試験時間120分
出題範囲コンピテンシーの全範囲
出題形式選択形式が中心、一部、記述回答形式を含む
400~800字程度の論述問題
合格基準記述式・論述式の合計得点が30%以上
かつ全問題に対する正答率が70%以上である者を合格とする。

12のコンピテンシーを覚える。 TEXT1-P22

12のコンピテンシーは記述問題で必ず出る。
一言一句間違えないように書けるようにする。

1キャリア・ディベロプメントに関する理論・モデル
2ヘルピング
3キャリア・アセスメント
4法律とGCDFとしての倫理
5多様な人々(特別なニーズをもつ人々)との協働
6労働市場情報・キャリア情報(LMI)とその情報源
7テクノロジー
8エンプロイアビリティ・スキル(EMP)
9クライアントおよび同僚のトレーニング
10キャリア・ディベロプメント・プログラム(CDP)のマネジメント
11プロモーションと広報活動
12コンサルテーションを受ける
GCDF-Japanの2は「ヘルピング(カウンセリング)」となっている。

12のコンピテンシーの語呂合わせ

1一番重要なのはやっぱり理論。キャリア・ディベロプメントに関する理論・モデル
2二人っきりでヘルピング
3散々なキャリア・アセスメントの結果だった。
4フォーがなまってロー(法律)。GCDFは4文字。リンリンが詰まってリンリ(倫理)
55人集まれば多様な人々。特別なニーズを持つ人々との協働も大切だ。
6ロクな労働市場情報・キャリア情報(LMI)がない。その情報源はどこだ!、責任者出てこい。
7007はテクノロジーのかたまりだ。
8早くエンプロイアビリティ・スキル(EMP)を活かして働きなさい。ゴロゴロしてないで。
9苦労するのはクライアント役。同僚もおよび腰でトレーニング。
1010でマネージャに昇進して1へ戻る。キャリア・ディベロプメント・プログラム(CDP)のマネジメント
1111PM(イレブンピーエム)でプロモーションと広報活動。大橋巨泉も絶賛!
12最後は他力に頼る。12時にホテルのレストランでランチを食べながらコンサルテーションをうける。

理論と人物の大枠を理解する。

カテゴリ人物
構造的アプローチ 1854-1908 パーソンズ 産業革命時代の社会改革運動家、職業の選択、3段階プロセス
1900-1979 ウイリアムソン ミネソタ大学、特性因子論、指示的カウンセリング
1919-2008 ホランド VPI、6つのパーソナリティ・タイプ(RIASEC)
1904-1991 ロー マズロー(1908-1970)の欲求段階説を職業に適用、過保護型・拒否型・受容型
発達論的アプローチ 1902-1994 エリクソン 精神分析家、アイデンティティ、モラトリアム
1911-2002 ギンズバーグ 職業選択プロセス、キャリア発達プロセス、妥協を最適化へ
1910-1994 スーパー ライフ・ステージ論、女性向けライフ・キャリア・レインボウ、自己概念
1920-1994 レビンソン 臨床・社会心理学者、トランジション、ライフサイクルの心理学
1933-2013 ブリッジス 年齢に関係ないトランジション3段階論、ニュートラル・ゾーン
1928-存命 シャイン キャリア・サイクル・モデル(3領域)、8つのキャリア・アンカー
1929-存命 シュロスバーグ 4-Sトランジションモデル、NCDA会長
社会的学習理論アプローチ 1925-存命 バンデューラ アメリカ心理学会会長 道具的学習、強化(正、負)、モデリング、自己効力
1925-存命 クランボルツ 計画された偶発性、5つのスキル
意思決定論的アプローチ 1995 カーニー 意思決定の7ステージ
1989 ジェラット 予測システム、価値システム、決定基準、積極的不確実性(直感、非合理・心の声)
1990 ティードマン 分化と再統合、3次元モデル、バリア
1969 ディンクリッジ 意思決定の回避と実行、リスクテーキング・スタイル

構造的アプローチは「論」がない。社会的学習理論アプローチは「理論」である。
ロジャース(1902-1987)は理論にカテゴリーされていない。(ミネソタ論争、来訪者中心アプローチ)

論述問題の解答例を見る。自分が使えそうな理論を2~3決めておく。

出題範囲・形式・合格率について(GCDFサイト)
上記ページの「論述問題について」「回答例」を参照する。

解答例をそのまま写して書いてみる。
構造的アプローチと発達論的アプローチの理論を2~3覚えておく。
多少こじつけで良い。
400字というのは40文字✕10行。①②をそれぞれ5~10行が目安。

過去に出た記述問題の解答を覚える。信頼性など。 TEXT2-P18

2015年7月 信頼性
2015年9月 妥当性

信頼性測定結果の一貫性や再現性のこと。測定する方法として再検査法、平行検査法、折半法などがある。(45文字)
妥当性本来測りたいものを測っているか。測定内容が測定目的を概念的・実証的に反映している度合い。妥当性には「内容妥当性」「基準関連妥当性」「構成概念妥当性」の視点がある。(81文字)

信頼性と妥当性は交互に出される可能性がある。10~40文字で記述。
もう1つのテストバイアスも念の為に覚えておきましょう。

信頼性測定結果の一貫性や再現性のこと。(16文字)
妥当性本来測りたいものを測っているか。(16文字)
テストバイアス集団によって有利・不利な得点を与える傾向があるかどうかのずれ。(31文字)

テキスト レッスン1 イントロダクション

このLessonでは、これからみなさんが学習するトレーニング・プログラムの概要と、GCDFおよびGCDF-Japanの資格、GCDFとして理解しておくべき、「キャリア」や「キャリア・ディベロプメント」、「キャリアカウンセリング」などといった各用語について学習します。

キャリア TEXT1-P27

キャリア
個人が生涯を通じた職業(職業経歴)選択にかかわる活動・態度と、「働くこと」にまつわる自由時間、余暇、学習、家族との活動などを含んだ個人の生涯にわたる生き方(ライフスタイル)のプロセス(過程)
ポイント
・生涯を通じた職業選択
・余暇や家族も含まれる
・生き方(ライフスタイル)のプロセス

キャリア・ディベロプメント TEXT1-P28

キャリア・ディベロプメント
キャリアの発達・開発の様をいい、日本の心理学やカウンセリングなどの専門家の間では「キャリア発達(キャリア開発)」、「職業発達」あるいは「進路発達」という訳語をあてている場合もあります。これは、知的発達や身体的、情緒的、社会的発達と同様に、人間の発達の一側面として職業的発達があるという考え方に基づいています。職業選択や職業適応で代表される職業的行動(人と職業との関わりあい)は、一時点で突然起こるものではなく、一生涯にわたる一連の発達過程を経て発達しつづけるものであるという考え方です。その発達過程はいくつかの段階に分けられ、それぞれの段階にはその段階特有の課題があり、その課題を達成しながら人は成長するという視点です。
ポイント
・発達、開発、職業、進路がキーワード。
・一生涯にわたる一連の発達過程
・エリクソン、ギンズバーグ、スーパー、レビンソンといった年齢に応じた発達論的アプローチの視点が強いか。

キャリアカウンセリング TEXT1-P28

キャリアカウンセリング
キャリア・ディベロプメントを援助するためのもので、「職業選択だけでなく、進学も含めた、さらに人が職業生活を送っていくうえで関連するあらゆる問題」を対象とするカウンセリングのことを指します。
このキャリアカウンセリングには、1対1の面談形式で行われるものと、複数名からなるグループを対象に行われるものがあります。一般的に、キャリアカウンセリングは最も難しいカウンセリングであるといわれています。なぜなら、カウンセラーの面接技術だけでは不十分であり、さまざまな情報、現実社会の様子を知っていなければならないからです。さらに多くの場合、問題解決までの期間が決められている場合が多いことも特徴です。
ポイント
・キャリア・ディベロプメントを援助するカウンセリング
・職業選択、進学、職業生活に関連するあらゆる問題を対象とする
・1対1の面談形式、複数名からなるグループを対象に行われる場合もある
・面接技術だけでは不十分、さまざまな情報、現実社会の様子を知っていること
・問題解決までの期間が決められている場合が多い

キャリア・ガイダンス TEXT1-P29

キャリア・ガイダンス
個人が自己理解を深め、労働界や教育界のさまざまな可能性や余暇活動などへの知識も広げ、自分なりの生活設計をするのに必要な意思決定能力を身につけていくことを援助する活動
ポイント
・自己理解を深める。
・労働界、教育会、可能性、余暇活動、知識
・生活設計、意思決定能力、援助する活動
・従来日本では「進路指導」と訳されていた。
・重要なスキルや知識を獲得促進するための体系的なプログラム
・欧米では専門職として確立していてカウンセラーの重要な任務になっている。
・カウンセリングだけでなくガイダンスの能力も開発、発揮することをめざす。

キャリア・プランニング・プロセス TEXT1-P29

キャリア・プランニング・プロセス
クライアントがキャリアに関する意思決定をする際に経ると考えられる過程を指し、具体的には「自己理解(Self)」・「選択肢に関する情報収集(Option)」・「統合・意思決定(Match)」・「目標設定・行動(Action)」のプロセスになります。
ポイント
・クライアントが意思決定する際に経ると考えられる過程
・SOMA(Self Option Match Action)
・三角形の図。上部がキャリアで下部がSOMA。
・クライアントは必ずしもこの順番で進めるわけではない。

テキスト レッスン2 カウンセリング

カウンセラーがクライアントに対して支援する際に、どのように面談を進めていけばいいのか、その基礎となる姿勢、能力、スキル(技術)を学びます。

カウンセリング TEXT1-P34

カウンセリング
カウンセリングとは、心理学的な専門的援助過程である。そして、それは、大部分が言語を通して行われる過程であり、その過程の中で、カウンセリングの専門家であるカウンセラーと、何らかの問題を解決すべく援助を求めているクライアントがダイナミックに相互作用し、カウンセラーのさまざまな援助行動を通して、自分の行動に責任をもつクライアントが自己理解を深め、「よい(積極的・建設的)」意思決定という形で行動がとれるよう援助する。この援助過程を通して、クライアントが自分の成りうる人間へと向かって成長し、成りうる人になること、つまり、社会の中でその人なりに最高に機能できる、自発的で独立した人として自分の人生を歩むようにされることを究極的目標とする。
補足
・GCDFのコンピテンシーで「2.ヘルピング」としているのは、米国において「カウンセリング」ができるキャリア・カウンセラーは大学院終了と数年の実務経験などの厳しい条件が必要なため、GCDFは「カウンセリング」を行うことができません。
・日本ではそのような背景はなく、「カウンセリング」の方が一般的であるため、GCDF-Japanプログラムでは「カウンセリング」と表記します。
ポイント
・心理学的な専門的援助過程
・大部分が言語を通して行われる過程
・カウンセリングの専門家であるカウンセラー
・援助を求めているクライアント
・ダイナミックに相互作用
・自分の行動に責任をもつクライアント
・自己理解、「よい(積極的・建設的)」意思決定、行動がとれるよう援助する
・社会の中でその人なりに最高に機能
・自発的で独立した人として自分の人生を歩む

カウンセリング関係確立のための3つの基本的態度 TEXT1-P36

カウンセリング関係確立のための3つの基本的態度
1.受容的態度
2.理解的態度
3.誠実な態度。
補足
・支援する側(カウンセラー)
・支援される側(クライアント)
・良好な信頼関係(ラポール)
・関係はクライアントが安心でき、尊重されていると実感できるようなものでなければなりません。
・クライアントが信頼できる安心感のある関係には、3つの基本的態度があります。

受容的態度 TEXT1-P36

受容的態度
受容はカウンセリングで特に重視されるカウンセラーの態度です。また「受容」をクライアントが発言したり表明したりすることをカウンセラーの価値観による判断を加えずに、そのまま受け取ろうとする(多くは「あいずち」の形で表現される)応答技法の意味で使われることもあります。しかし、本プログラムでは、応答技法よりもっと深いレベルでのカウンセラーの「受容的な態度」や「姿勢」の意味で使います。つまり技法ではなく、カウンセラーがクライアントに向かう態度、それ自体のことです。カウンセラーにとっての受容とは、クライアント個人の独自性を尊重し、敬意を持って相応の扱いを実践する態度そのものなのです。
ポイント
・応答技法ではなく、カウンセラーがクライアントに向かう態度
・個人の独自性を尊重し、敬意を持って相応の扱いを実践する態度

理解的態度 TEXT1-P37

理解的態度
理解とは、物事の意味を正しく把握することです。カウンセラーにとっては「クライアントが伝えようとする意味を、できるだけ把握すること」と「その努力をする姿勢」となります。クライアントが話すことをクライアントと同じように感じ、考え、理解すること。また「言葉そのものだけでなく、その言葉と一緒に伝わる気持ちも理解する」ことが大切です。理解するといっても同一化や癒着になってはいけませんし、同情することでも憐れむことでもありません。 あわせて理解したことを相手に伝える努力をすることも大切です。相手に伝わってはじめて、「私のことを理解してくれている」という実感ができるからです。
ポイント
・クライアントが伝えようとする意味を、できるだけ把握すること。
・その努力をする姿勢
・言葉と一緒に伝わる気持ちも理解する。
・理解したことを相手に伝える。
・相手に伝わってはじめて、「私のことを理解してくれている」という実感ができる。

誠実な態度 TEXT1-P38

誠実な態度
カウンセラーが、自分を自分以上にも自分以下にもみず、あるがままの自分を受け入れ、またクライアントに対しても自分を自分以上にも自分以下にもみせない姿勢をもつことです。
クライアントと向い合っている時、カウンセラーの内面にもいろいろな考えや感情、思いが起こってくるはずです。たとえば、自分の能力や知識の限界を感じ不安になるかもしれないし、クライアントの話についていけず混乱してしまうかもしれません。そのような場合、誠実であるとは、まず、自分の内で経験している不安や混乱、クライアントに対する批判や賞賛の気持ち-内的経験-を意識し、そのような状態にいる自分を否定せず、そういう自分を受け入れることができることです。
ここで注意しなければならないことは、自分の内面の状態に気付き、それを受け入れることと、それを表現したり、感じたままに行動することとは違うということです。
ポイント
・カウンセラーが、あるがままの自分を受け入れる。
・クライアントに対して、自分を自分以上にも自分以下にもみせない姿勢をもつ。
・カウンセラーは自分の内面の状態に気付き、否定せず、そういう自分を受け入れる。
・注意すべきは、それを表現したり、感じたままに行動してはいけないということ。

カウンセラー視点の6ステップ・プロセス TEXT1-P41

カウンセラー視点の6ステップ・プロセス
・関係構築
・問題の把握
・目標の明確化
・方策の検討
・意思決定と行動化
・終了
補足
・カウンセリング・プロセスとは、「クライアントがポジティブな方向性を見つけて望ましいゴールを達成できるような行動を起こすために、カウンセラーがクライアントを支援する過程」
・このステップは明確に区別するものではなく、また直線的に進むものでもありません。「目標の明確化」から「問題の把握」に戻ったり、といった具合に、各ステップは前後しながら進むこともあります。

クライアント視点の心理的経験プロセス TEXT1-P42

クライアント視点の心理的経験プロセス
1.自己認識
2.自己対決
3.自己受容
4.自己選択
5.自己決定・決断
6.コミットメント
補足
・前半は問題発見のプロセス
・後半は課題解決策検討のプロセス
・カウンセラーはクライアントの問題を共に発見する
・クライアントが自分自身で意思決定し、新しい建設的な行動が取れるように支援する。
・カウンセラーが自分勝手に問題を作り、クライアントに代わって意思決定することではありません。

カウンセリングの基礎的な能力 「聴く力」 TEXT1-P44

カウンセリングの基礎的な能力 「聴く力」
聴く力とは、クライアントが言いたいこと、言おうとしたことを聴き、「言わんとしていること」を理解していくことです。クライアントの発する言葉には必ず意味があります。たとえ同じような言葉でも、クライアントが違えば、異なる意味で使っていたり、そこに何らかの気持ちを込めています。クライアントが言った事柄に対して、知的、情緒的、意思的側面でどのような気持ちを伝えようとしているのかを捉えることが大切になります。カウンセラーができることは、クライアントが「何について」「どのようなことを伝えたいのか」を理解しようとすること、そして、「わかったこと」をカウンセラーの言葉で「話し、伝えること」です。日本では、「聴くこと」は傾聴と訳され、「ただ黙ってうんうんと頷いて聴く」ことが強調されているような誤解があります。コミュニケーションの特徴が「自己主張」文化であるアメリカと違い、「寡黙」「慮ること」が褒め言葉になるような日本文化では、おのずと「聴くこと」の意味が異なることを理解しておきましょう。そのため、「聴くこと」とは、カウンセラーが「クライアントについてカウンセラー自身がわかったことを伝えるために聴くこと」と考えておきましょう。
ポイント
・クライアントが「言わんとしていること」を理解していくこと。
・知的、情緒的、意思的側面で捉える。(知情意)
・「何について」「どのような気持ち」を持っているかを捉える。
・「聴くこと」は「ただ黙ってうんうんと頷いて聴く」ことではない。
・「わかったこと」をカウンセラーの言葉で話し、伝える。

カウンセリングの基礎的な能力 「話す力」 TEXT1-P45

カウンセリングの基礎的な能力 「話す力」
カウンセリングは言語を通して行うプロセスですので、カウンセラーには話す力、すなわちコミュニケーション能力が求められます。ここでいう話す力とは、何か特定の応答方法や技法のことではありません。優れたカウンセラーは、決まりきった一定の話し方をするのではなく、クライアントやカウンセリングのプロセスに応じて、ふさわしい話し方を臨機応変にしているといわれています。これは、クライアント同様、カウンセラーも個性をもつ一人の人間だからなのです。話す能力には、クライアントが話したことをどのように理解したかを伝えることや、表現しにくいことを安心して表現できるようにすること、相手が理解できるように伝えることなどが含まれます。
ポイント
・おうむ返しではなく、「クライアントが言いたいことをどのように理解したか」を伝えていく。
・決まりきった一定の話し方をするのではなく、ふさわしい話し方を臨機応変に行う。
・カウンセラーも個性をもつ一人の人間である。

カウンセリングの基礎的な能力 「観る力」 TEXT1-P46

カウンセリングの基礎的な能力 「観る力」
観る力とは「クライアントを観る力」、「カウンセラー自身を客観的に観る力」、「カウンセラーとクライアントとの関係の変化を通じてカウンセリング・プロセスそのものを観る力」の3つの能力のことです。
クライアントを観る力
クライアントを観察するにあたっては、クライアントがどのような状態なのか、言語に敏感になり、変化を追っていける能力が求められます。
カウンセラー自身を客観的に観る力
カウンセラー自身を客観的に観るにあたって大切なのは、セルフ・アウェアネスという概念です。これは、自覚、自己理解、自己認識といった意味ですが、ひとことで言うと「自分の状態・行為・その意図などに気づくこと・意識化すること」です。
カウンセリング・プロセスそのものを観る力
さらに、カウンセラーは、カウンセラーとクライアントとの関係の変化を通じて、カウンセリングのプロセスを観ることを意識する必要があります。これはアウェアネスともいい、気づいていること、認知、感知といった意味があります。
沈黙
また、観る力が求められる状況として、面接中などにクライアントが沈黙するときがあります。この沈黙にどのように対処するかは、カウンセラーにとって大きな課題となります。

沈黙には以下のようなものがあるといわれています。
・クライアントがカウンセラーの言葉を聞いて、自分の考えをまとめたり、話す言葉を選んだりしているとき
・何を話していいかわからなくなり、カウンセラーが質問してくれるのを待っているとき
・カウンセラーとの話が一段落し、次に進もうとしているとき。
・クライアントが、カウンセラーに反感を抱いたり、失望して、その不満足を言葉で表現せずに沈黙してしまうとき
・面接そのものやカウンセラーに対する敵意や反感や、話し出しづらいといった恥ずかしさや困惑を感じているとき

沈黙にあたっては、あせるのではなく、自分が理解したことを言葉で、もしくは場合によっては沈黙という行為を通じて伝えていくことが大切です。
クライアントが考えをまとめようとしているような場合は、クライアントが話しだすまで待つことが大切です。

「関係構築」「時間と忍耐」 TEXT1-P52

カウンセラー視点の6ステップ・プロセス 関係構築
関係構築は、カウンセリング・プロセスの終了まで続く行為です。良好なカウンセリング関係の構築にあたっては、カウンセラーは3つの基本的態度が必要です。「受容的態度」「理解的態度」誠実な態度」です。このステップ「関係構築」ではこの3つの他に「時間と忍耐」が加わります。
時間と忍耐
カウンセラーにとって「時間と忍耐」とは、クライアントが言葉や気持ちを自ら表現するまで待つことです。 カウンセリングはクライアント個人の意思決定を支援するプロセスですので、クライアント自身が主体的に話してくれることが大変重要です。クライアントがそういう状態になるまでには、時間がかかるものだということを理解しましょう。クライアント自身の話や態度に集中し、話を途中でさえぎらずに聴く態度を示すことや、沈黙や曖昧さに耐えることも、カウンセラーとして必要なのです。

「感情」 TEXT1-P77

クライアントを観るための視点 「感情」
カウンセラーとして活動する時、常に集中して気にかけていなければならないものの一つが、クライアントの「感情」です。クライアントを支援するときに、感情表現に敏感であることと、その感情をどこまで捉えることができるかが、クライアントとカウンセラーの良い関係を築くことにもつながり、クライアントから多くの情報を引き出す時のポイントとなります。

「思考」 TEXT1-P79

クライアントを観るための視点 「思考」
クライアントの考え、「思考」を観る際に、カウンセラーは「このクライアントは今話していることについてどのように考えているのだろう」、「どんな判断で話しているのだろう」、「彼(彼女)はどういった価値観で話しているのだろう」という点に注意する必要があります。近年の米国では、認知行動カウンセリングというアプローチが盛んですが、このアプローチはクライアントの思考が「感情」と「行動」に影響を与えるという心理的前提に基づいた技法です。たとえば、レイオフされたクライアントが「これは会社の責任だ。管理職の無能さが自分を犠牲にしたのだ」と考えるならば、当然怒りの感情をもち、「腹をたてる」ことになります。しかし、クライアントが「これもすべて自分の責任だ。自分は何てダメな人間なんだろう」と思ったとするならば、怒ることよりも、「落ち込む」「沈む」という、むしろ「うつ的」な気持ちになるでしょう。このようにクライアントの見解、ものの見方、解釈、価値観といった「思考」が、その人の感情や行動に大きく作用する結果になります。

思考とその感情および行動への影響を理解することによって、カウンセラーは自らクライアントの考えにも耳を傾けるようになります。この結果、クライアントは感情と思考の両方を正確に、しかもカウンセラーに判断されることなく共感的に話を聴いてもらえたことになり、はじめて「わかってもらった」という理解の経験をすることができます。この体験こそカウンセリングの本質であり、クライアントの成長を促す基礎といえるでしょう。

「意思」 TEXT1-P80

クライアントを観るための視点 「意思」
クライアントを観る視点の3番目は「意思」です(1番めは感情、2番めは思考)。クライアントの行動は感情と思考の結果ですが、それを実現させるのが意思の役割です。「ああしたい」、「アレはイヤだ」、「コレはしたくない」云々という意思は、言葉で表示されることもあれば表明されない場合もあります。クライアントの意思と感情、思考、行動がそれぞれ一致すれば精神的安定をもたらしますが、ズレが生じると心理葛藤を起こす原因になります。逆にいうと、クライアントの精神的葛藤は意思レベルのくい違いから生じるとも考えられます。カウンセラーはこの点に注意し、クライアントの意思をはっきりと聴くことが大切です。

「非言語的スキル」 TEXT1-P82

カウンセリング・スキル 「非言語的スキル」
非言語的スキルは(1)視線、(2)姿勢、(3)準言語的要素(声、イントネーション、話し方等)、(4)座る位置、そして(5)うなずきのスキルに区分されます。これらは非言語的スキルの最小単位で、この5つをマスターすることにより、非言語的スキル全体の習得が可能になります。

「言語的スキル」 TEXT1-P82

カウンセリング・スキル 「言語的スキル」
言語的スキルは、主にクライアントとのラポールづけをねらいとする傾聴技法と、ラポールをもとにクライアントの評価、査定、情報収集、提供や深い自己理解の促進を目標とする活動技法に分割され、それぞれ各4つの最小単位の技法にさらに細分化されます。これらのスキル(技法)の一つ一つはいたってシンプルですが、それらの応用によって相当複雑なカウンセリング技術を組み立てることが可能になります。

「傾聴技法」 TEXT1-P86

カウンセリング 言語的スキル 「傾聴技法」
傾聴技法には、以下の4つの最小単位のスキルがあります。
a.明確化
b.感情反映
c.言い換え
d.要約
明確化
クライアントの話した内容を、明確に聴きとって理解することは、カウンセラーにとって最も大切なスキルであると同時に、カウンセリングの基礎でもあります。明確化の技法は、文字通りあいまいなメッセージを「明らかにし」、カウンセラーの理解をクライアントに確認する方法ですが、技法的には2つの場合が考えられます。
一つは、クライアントのメッセージの不明な部分を「明確」にすることです。もう一つは、クライアント自身の不明瞭な気持ちや考えを「明確化」するカウンセラーの支援があげられます。
感情反映
カウンセラーがカウンセリング面接を行う際、クライアントの感情に注意を払うことが必要です。そのことが「自分の気持ちをわかってもらった」という、クライアントの大きな心の支えとなると同時に、現実的な問題解決の第一歩につながります。それゆえに、カウンセラーはクライアントの感情を正しく理解し、さらに理解した内容をクライアントに自分の言葉で伝えるという技法に「熟達する必要」があります。このクライアントの感情の伝えは、「感情反映の技法」と呼ばれます。
言い換え
感情反映はクライアントの感情に焦点をあてますが、クライアントの経験や出来事、思考や行動といった感情以外の事柄については、言い換えという技法が使われます。客観的事実、情報をできるだけ多く正確に把握することは、クライアントの理解、支援に不可欠なことはいうまでもありません。また、認知行動理論によるとクライアントの考えや認識は感情に大きな影響を与えますから、カウンセラーはクライアントの思考も含めて、クライアントを幅広く巨視的な立場から理解することが要求されます。言い換えの技法は、クライアントの発言内容をカウンセラーが自分の言葉で表現するスキルですから、まさにこの目的にかなっているといえるでしょう。
要約
傾聴技法の4番目、要約は、クライアントが(1)複雑な内容について話した場合、(2)感情、思考、意思、出来事等、複数の内容を同時に発言した場合、そして、(3)不明確やあいまいな情報をコミュニケートした場合、に利用されるスキルです。明確化と多少似ていることろがありますが、原則として、要約はクライアントの複数から成り立つ発言、もしくは複雑で長々と続く発言に対して用いられ、クライアントの発言を要約することから、それまではっきりしていなかったパターンや主題なども明らかになるのが特徴です。

「活動技法」 TEXT1-P92

カウンセリング 言語的スキル 「活動技法」
「傾聴技法」より、もっとアクティブな「活動技法」も4つの最小単位のスキルによって構成されています。それらのスキルとは次の4つです。
a.質問(探索)
b.矛盾提示
c.解釈
d.情報提供
質問(探索)
質問(探索)技法は、英語では「プローブ(Probe)」と呼ばれ、単に問いかける(Question)という意味よりも「深い探りを入れる」、「厳密に調べる」というニュアンスを持っています(医学的に「針を刺して調べる」という意味もあります)。よく知られているように、質問技法には「はい-いいえ」の答えを求める「閉鎖型」の質問と、広く情報を追求する「開放型」の質問の2通りがあります。
矛盾提示
活動技法の2番目のスキルは矛盾提示と呼ばれ、クライアントの発言や言語の矛盾を指摘する技法です。クライアントの発言内容は「主観」に影響されやすく、客観性を欠いたり、話のつじつまが合わないこともありがちです。たとえば、クライアントがリストラの可能性について「心配していない」と言った直後に、「毎日不安でイライラする」と言ったとすれば、それは矛盾した発言だと言えます。
解釈
クライアントの行動や思考、感情に共通する原則パターン、もしくは個々の部分から成り立つ全体像をはっきりさせる技法です。 クライアントと面接を続けることによって、カウンセラーはクライアントの発言や行動にある一定のパターンともいうべき規則性を見つけることがあります。一例を挙げるなら、どのような仕事も長続きせず職業を転々とするクライアントは、どの職場でも上司とトラブルを起こすことがその原因となっている、といった場合が考えられます。このようなクライアントは、一つ一つの職場体験について主観的な立場から説明することはできても、全体的な視点から客観的に自分の行動を見つめることは非常に難しく、不可能に近いといえます。「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、部分的、断片的な自己認識から総体的な深い自己理解、そしてその理解に基づいた肯定的な行動変革と自己受容といった、これらのゴールを可能にするスキルが解釈といえるでしょう。
情報提供
活動技法の4番目は、クライアントに適切かつ重宝な情報や資料を提供するスキルをいいます。この技法はカウンセリングをカウンセラーが行う場合、評価結果をクライアントに報告する際に大いに役立ちます。また、テストの結果以外にもクライアントにとって役立つ情報を提供することは、クライアントの無用な不安を取り除いて流言や迷信を訂正し、無駄な時間を節約することにもつながるので、カウンセラーはこの技法をうまく活用すべきでしょう。

「来談者中心のアプローチ(ロジャーズ)」 TEXT1-P100

1.来談者中心療法
ロジャーズの来談者中心療法は、精神分析より40年も遅れて誕生していますが、普及率という点では精神分析を上まわる勢いがありました。
2.来談者中心療法における人間観
ロジャーズは、人間の本質を生物的な存在としてとらえており、これを有機体といっています。有機体には自己実現の傾向(成長・自律性・独立への傾向)があります。すなわち、人間は自分自身を成長させていく力を内在しているという人間観を持っています。また、ロジャーズは人間の行動を規定するのは客観的な刺激ではなく、その個人が感じている意味のある世界(これを「現象学的場」という)であるとしました。
3.経験と自己概念の一致
ロジャーズは、経験と自己概念を通じて意識化されるものの不一致が人格障害と考え、治療とはこの経験と自己を一致させることであると考えました。
4.パーソナリティ変容理論
ロジャーズは、人間を動かしている基本動機は実現傾向であると考えています。実現傾向とは、人間を維持し強化する方向に全能力を発展させようという内在的傾向のことです。
5.来談者中心療法のカウンセリング
ロジャーズは、クライアントと共にいる際の、カウンセラーの全体的な「あり方」を重視したということに特徴があります。ロジャーズの提唱したカウンセリングの手法は、現在ではさまざまなアプローチにおいて基礎として取り入れられています。なかでも、ロジャーズが非指示的療法時代に用いた、来談者の内的準拠枠からの理解を目指す次のような技法が有名です
(1)受容     「はい」「いいえ」「うん」など
(2)内容の再陳述 クライアントが話した事柄を繰り返す。
(3)感情の反射  クライアントの感情をとらえ繰り返す。
(4)感情の明確化 クライアントが言い切れていない感情を受け止めて繰り返す。
来談者中心アプローチ まとめ
カウンセリングは、カウンセラーが治療するというよりも、クライアントが自分の力で行動変容していく過程をカウンセラーが援助していくということ、また、そのためにカウンセラーはどのような態度・姿勢が必要であるかということを学ぶことができます。

テキスト レッスン3 キャリア・ディベロプメントに関する理論・モデル

キャリア・ディベロプメントに関する理論は、クライアントや自分自身を理解する枠組みを与えてくれるものです。ここでは、理論をクライアント支援に活用できるよう、理論の歴史的背景とその重要性を学びます。

「理論的アプローチの分類」 TEXT1-P115

(1)構造的アプローチ
構造的アプローチとは、個人の特徴(性格・気質・興味・関心・志向・適性・能力等)とキャリア選択の関係を説明したアプローチです。「特性因子論」、「パーソナリティ・タイプと環境タイプ」、「社会経済的観点からのアプローチ」、「パーソナリティ理論」などを学びます。
(2)発達論的アプローチ
発達論的アプローチとは、人生を通じた発達の段階には特有の課題がある等、変化するプロセスに焦点をあて、その課題を解決していくための能力を発達させることに注目する考え方です。本テキストでは、「アイデンティティの発達理論」、「ライフ・ステージ/ライフ・キャリア・レインボー/アーチモデル」、「キャリア・アダプタビリティ」、「トランジション」、「キャリア・サイクル・モデル」などを学びます。
(3)社会的学習理論アプローチ
社会的学習理論アプローチとは、キャリア選択や意思決定に影響を与える行動的・認知的学習について説明する理論です。ここでは社会的学習理論の基礎となる「学習と強化」、「モデリング」、「自己効力」と「キャリア意思決定のための社会的学習理論」などを学びます。
(4)意思決定論的アプローチ
意思決定論的アプローチとは、キャリアに関する意思決定プロセスを理解することで、クライアントの意思決定を支援しようとする考え方です。ここでは、4つの意思決定理論と意思決定の障害(バリア)、意思決定のスタイルについて学びます。

各アプローチと主な理論家 TEXT1-P116

アプローチ概要理論家主な理論ページ
構造的アプローチ個人の特徴とキャリア選択の関係 パーソンズ3段階プロセス133
ウィリアムソン特性因子論134
ホランドパーソナリティと環境タイプ136
ローパーソナリティ理論144
社会経済的観点からのアプローチ148
発達論的アプローチ人生を通じたキャリアの進み方と課題 エリクソンアイデンティティの発達154
ギンズバーグキャリア発達プロセス156
スーパーライフ・ステージ
ライフ・キャリア・レインボーほか
158
レビンソントランジション169
ブリッジストランジション172
シュロスバーグ4-Sトランジション・モデル173
シャインキャリア・サイクル・モデル176
社会的学習理論アプローチ社会的学習理論のキャリアへの活用 バンデューラ社会的学習理論
自己効力
187
クランボルツキャリア意思決定のための社会的学習理論193
意思決定論的アプローチキャリアに関する意思決定プロセス カーニー意思決定ステージ203
ジェラット意思決定理論
積極的不確実性
206
ティードマン&オハラ意思決定プロセス211
ティードマン&ミラー・ティードマン意思決定理論214
意思決定の障害(バリア)217
カーニー意思決定スタイル220
ディンクリッジ意思決定スタイル221

パーソンズの職業指導運動 TEXT1-P117

キャリアカウンセリングの起源は、20世紀初頭に職業選択の自由を背景に展開されたパーソンズの「職業指導運動」であるとされています。
この指導の背景には産業革命があります。19世紀後半、アメリカは産業革命によって人々の仕事環境や生活状況が激変し、ヨーロッパ各地からの多くの移民であふれ返っていました。急速な経済成長と産業の集中によって、移民だけではなく地方に住む人々をも都市圏へ流入させるという結果を招くことになり、パーソンズの住むボストンも例外ではありませんでした。労働者は、工場で強いられる長時間労働や過密で劣悪な住宅環境におかれ、特に移民たちはスラム街で貧困な生活を続けていました。そんな移民たちの支援を目的として、1901年にボストン市民サービス館が創設されました。

重要
パーソンズ
パーソンズの職業指導運動
アメリカの社会改革運動家
職業カウンセリングを開始
主著「職業の選択」1909年

ミネソタ論争 TEXT1-P121

ウィリアムソンの特性因子論
ミネソタ大学の職業発達心理学の研究所のメンバーであるウィリアムソンの著書「生徒へのカウンセリング法」は、キャリアカウンセリングに大きな影響を与えました。この研究は多くの点でパーソンズの考え方に基づいており、後に、特性因子アプローチを確立していくことになります。
彼は、6つのステップでキャリアカウンセリングを説明しています。彼のカウンセリング手法は後にカウンセラーがクライアントの指示する姿勢があるということで、「指示的カウンセリング」と呼ばれるようになりました。
ロジャーズの登場
1942年、ロジャーズの「カウンセリングとサイコセラピィ」が出版されました。ロジャーズはそれまで心理臨床家として主に情緒的な問題を抱えた人たちの治療を行ってきました。彼のアプローチは「非指示的カウンセリング」と呼ばれ、キャリアカウンセリングにおける従来の仮説が抜本的見直しを迫られるきっかけとなりました。
重要
ウィリアムソン

テキスト レッスン4 構造的アプローチ

なぜ、人はある特定の職業を選択するのでしょうか? 製造業を志望する人と、サービス業を志望する人には、何か違いがあるのでしょうか? 研究職につく人には、何か特徴があるのでしょうか? 構造的アプローチは、このような個人の違いに注目してキャリアとの関係を考えるアプローチです。

パーソンズの職業相談モデル TEXT1-P133

パーソンズの職業相談モデル
1909年、パーソンズは「職業選択」という本の中で「人と職業の適合」という基本原理をもとに、科学的な職業選択モデルアプローチを紹介しました。
3つの仮説
彼のアプローチは3つの仮説に基づいています。
①各個人は、必ずほかの人とは違う能力、または特性を持っている。しかもこの能力・特性は測定が可能である。
②個人は、自分の能力・特性に最も相応しい職業を選択する。
③個人の能力・特性と職業に求められるスキルが一致すればするほど、個人の仕事における満足度は高くなる。
カウンセリングの3段階プロセス
パーソンズはこの仮説に基づいて、以下のカウンセリングの3段階プロセスを提唱しました。
ステップ1自分自身、適性、能力、興味、資源、限界、その他の資質についての明確な理解
ステップ2成功するための必須要件や条件、メリット、デメリット、報酬、就業の機会、さまざまな仕事についての展望に関する知識
ステップ3この2つの事実の関連について推論すること
パーソンズのアプローチは、職業カウンセリングの基礎といえます。
重要
パーソンズ
3段階プロセス

ウィリアムソンの特性因子論 TEXT1-134

特性因子論とは
キャリアカウンセリングの理論の中で用いられる特性因子論とは、能力やもっている技術、パーソナリティなど、その人を構成する特性と、仕事内容や仕事に必要な要件(因子)の両者をうまく適合させることが大切であるという考え方をいいます。
4つのキャリア問題
ウィリアムソンは、「個人のもつ(仕事に関する)スキル・能力と、それぞれの仕事が必要とするスキル・能力とを適合させることで、よい職業選択や職業適応をもたらす」という基本的考え方を示し、現在に至るキャリア理論に大きな影響を与えました。
キャリアに関する課題は予測することが可能で、①選択しなかったことによる課題、②不確かな選択、③賢明でない選択、④興味と適性のずれ、の4つのいずれかであるとしています。
6段階カウンセリングプロセス
ウィリアムソンは、クライアントの捉えている問題が4つのキャリア課題のいずれにあたるかを判断したうえで、以下の6段階のキャリアカウンセリングを実施するとしています。
①分析段階 問題点を聞いたり、心理検査を行う
②統合段階 職業や労働情報を収集し、統合する
③診断段階 問題点を洗い出し、優先順位をつける
④予後段階 問題から予測される結果と、適応の可能性を判断し、将来の見通しを立てる
⑤処置段階 カウンセリングを行い、指導助言をする
⑥観察段階 フォロー・アップをして経過を見る
重要
ウィリアムソン
特性因子論

ホランドのパーソナリティと環境タイプ論 TEXT1-P136

基本的な理念
ホランドは、数多くのカウンセリング経験から、個人のキャリア選択は、個人のパーソナリティと仕事の環境との相互作用の結果から出来上がるものであるとしました。「個人は、自分のパーソナリティと一致するような社会的環境で仕事をすることにより、より安定した職業選択をすることができ、より高い職業的満足を得ることができる」ということが、このホランドの理論の主旨となっています。
ホランドの基本的な概念は以下のとおりです。
①職業の選択は、パーソナリティの表現の一つである
②職業興味検査は、パーソナリティ検査である
③職業的なステレオ・タイプは、心理学的・社会学的に確かで重要な意味をもつ
④同じ職業についている人々は、似たパーソナリティ特性と同種の発達史を共有している
⑤同一の職業群に属する人々は、似たようなパーソナリティをもつので、さまざまな状況や問題に対して同じような反応をしたり、特徴的な対人関係を作る傾向がある
⑥職業的な満足、安定性、業績は、個人のパーソナリティとその人の働く環境との一致度によっている
4つの仮説
ホランドは理論を構築するうえで、4つの仮説をおきました。
①我々の文化圏において、大多数の人は「現実的(R)、研究的(I)、芸術的(A)、社会的(S)、企業的(E)、慣習的(C)」の6つのパーソナリティ・タイプに分類される
②環境タイプも6つのタイプ「現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的」に分類される
③人々は、自分のもっている技能や能力が生かされ、価値観を態度で表現でき、自分の納得できる役割や課題を引き受けさせてくれるような環境を求める
④人の行動はパーソナリティと環境との相互作用によって決定される
6つのパーソナリティ・タイプと環境タイプ
ホランドが設定した6つのパーソナリティ・タイプは以下のとおりです。
タイプ特徴示しやすい特徴
現実的(R)物、道具、機械などを対象として、明確で、秩序的かつ組織的な操作を伴う活動を好む。実際に自分の手先を使うことが得意、逆に、教育的、治療的活動を好まない非社交的 唯物論的 目立たない 従順な 自然な 頑固とした フランクな 健全な 倹約的 純粋な 持続的 非洞察系 頭の固い 実利的 単調な
研究的(I)物理的、生物的、文化的現象の理解やコントロールを目的とした、それらの観察、言語的記述、体系的、創造的な研究を伴う活動を好む。逆に、説得的、社会的活動、あるいは反復を伴う活動を好まない。独立志向が高く、物事を分析し、自分の意見を明確にもっているタイプである分析的 自律的 合理的 注意深い 知的 控え目な 批判的 内省的 内気な 複雑な 悲観的な でしゃばらない 好奇心旺盛な 几帳面 人望を気にしない
芸術的(A)芸術的な形態や作品の創造を目的とした、物、言語、人間性に関連する活動を好み、逆に、具体的、体系的、秩序的活動を敬遠する。繊細で感受性が強く、規則や習慣を重視せず、内向的で衝動的な傾向がある。このタイプの人は作文、音楽、美術関係の能力を持ち、独創性や想像力に恵まれる。反面、商業的な能力の発達を阻害する複雑な 想像力に富んだ 直感的 気まぐれな 非実利的 反抗期 情緒的 衝動的 独創的 表現力に富む 自律的 感受性の強い 理想主義的な 内省的 開放的
社会的(S)情報伝達、訓練、教育、治療、啓蒙を目的とした他者との対人接触を伴う活動を好むようになり、逆に、物、道具、機械を用いた具体的、秩序的、体系的活動を好まない。人間関係能力(対人関係、教育的能力)をもたらす反面、手指運動の能力あるいは技術的な能力の発達がとどこおる。社会的活動に熱心で、比較的高いコミュニケーションスキルがある。教育的な活動を好むタイプである優越感の強い 寛容な 責任感の強い 協力的 頼りがいのある 社交的 共感的 理想主義者 機転のきく 忍耐 強い 親切な 洞察力のある 友好的な 説得的な 温かい
企業的(E)組織目標の達成や経済的利益を目的とした、他者との交渉を伴う活動を好むようになり、逆に、観察、言語記述、あるいは体系的な活動を好まない。リーダシップ能力を発揮し、指導力、対人処理能力、説得力をもたらす反面、科学的能力の発達がとどこおる貪欲 精力的 まめな 冒険的 自己宣伝力 楽天的 愉快な 興奮を求める 自信家 野心家 社交的 威張る 外交的 能弁家
慣習的(C)組織や経済的目標の達成を目的としたデータの具体的、秩序的、体系的操作(たとえば、前もって定まった計画に従ってのデータ記録、材料のファイリングや複製、文章やデータの整理、情報処理機器の操作等)を伴う活動を好む。逆に、あいまいで、基準がなく、探索的で非体系的な活動を好まない。書記的能力、計算力、商才をもたらす反面、芸術的能力の発達がとどこおる用心深い 堅い 粘り強い 調和的 抑制的 実利的 良心的 規律正しい とりすました 防衛的 従順な 倹約家 有能な 行儀のよい 想像力に走らない
プレディガーの仕事の対象
プレディガーは、ホランドの理論を背景に仕事で扱う対象として①データ、②アイデア、③人、④モノの4つの分野が存在するとしています。
パーソナリティ・タイプの発達
では、このパーソナリティ・タイプはどのようにして形成されるのでしょうか?
人は、生まれついてもっている特徴によって、ある種の活動を好んだり、ほかの活動を嫌ったりシます。成長するにつれ、好きなことをすると、うまくできるので周囲からの報酬(褒められたり、得をする体験など)を得られることが多くなります。すると、満足が得られるので、さらに好きなことの活動を一生懸命行い、より一層上達するというサイクルが生まれます。さらに成長するにつれて、好きな活動や興味、価値観などがはっきりし、パーソナリティ・タイプが発達していきます。
また、パーソナリティ・タイプの発達には、親や友人、学校など周囲の環境のパーソナリティ・タイプの影響も受けると考えました。たとえば、親は、自分のパーソナリティ・タイプに近い友人と好んで付き合い、自分のパーソナリティに沿った行動をとります。たとえば、芸術的タイプの親は、絵画や花を飾ったり、映画をたくさんみたりすることが考えられ、そのような環境が、子供にも影響を与えると考えられます。このように、遺伝的特徴と環境の相互作用によって、興味が明確になっていき、パーソナリティ・タイプへと発達していくのです。
6つの環境タイプ
前述のとおり、パーソナリティ・タイプは職業に対する好みによって類型化しています。ホランドによれば、環境の特徴はその成員の典型的な特徴でもあるということです。したがって、どのような種類の人間がそのグループを構成しているかを知ることができれば、そのグループがつくりだす雰囲気を推測することができる、ということを示しています。また、パーソナリティ・タイプと共通した構造をもたせることで、人間と環境を同じ用語で分類し、その組み合わせの結果を予測しやすくしました。
ホランドの6つの環境タイプ
環境タイプ特徴
現実的(R)物体、道具、機械、動物を具体的に、指示に従って、組織的に操作する。水道・ガスの鉛管工、飛行機のエンジニア、電気エンジニア、機械操縦、カメラマン、製図者といった職業の人間が多く存在している
研究的(I)物理的、生物的、文化的現象を観察し、表象を用いて、組織的に創造的な研究を行う。物理学者、科学者、数学者などの科学者、技術専門家、図書館の館員、技師、システムエンジニア、電気技師などの職業の人間が多く存在している
芸術的(A)あいまいで自由な環境であり、非組織的活動を行ったり、芸術的な形や作品を創る能力が必要とされていることが多く、彫刻家、画家、デザイナー、音楽家、音楽教師、指揮者、編集者、ライター、批評家などの職業の人間が多く存在している
社会的(S)広報普及、訓練、発達援助、治療あるいは啓蒙といった、他者に対する働きかけをすることが多い。教育業界では、教師、教務、大学教員などの仕事、社会福祉面では、ソーシャル・ワーカー、社会学者、カウンセラー、看護婦などの職業の人間が多く存在している
企業的(E)組織が設定した目標や、個人的に興味のある目標を達成させるよう、他人を動かすようなことが多い、企業の中の管理職(人事、生産など)、営業マネージャー、さまざまな営業のやり方、たとえば、保険、不動産、車などのセールスなどの職業の人間が多く存在している
慣習的(C)決められた計画に従って、簿記、さまざまな種類のファイリング、文字や数字で書かれた資料の整理、事務機器や情報処理機器の操作等、明確で、順序だった仕事を期待されることが多い。オフィスおよび事務処理の仕事が多く、たとえば、タイムキーパー、キーパンチャー、電話のオペレーター、秘書、経理、受付などの職業の人間が多く存在している
タイプの類似性
各タイプ間の相関、あるいはタイプ間の心理学的類似性は、タイプ間の距離に反比例します。つまり、2つの間の距離が短くなればなるほど、その2者間の心理学的類似性は高くなります。たとえば、企業的タイプと研究的タイプとは非常に距離が離れており、したがって、それらは非常に心理学的類似性は低く、「対極のタイプ」であるといえます。企業的タイプは現実的タイプとの間に中程度の類似性をもち、そして社会的タイプ・慣習的タイプの人とより近い類似性をもつということになります。
ホランドは、単なる研究にとどまらず、この理論に基づいてキャリアカウンセリング、キャリア・ガイダンスのためのアセスメントツールである「VPI職業興味検査」(VPI)などを開発し、職業指導・進路指導に大きく貢献しています。
ホランドの六角形モデル
ホランド理論のカウンセリングにおける留意点
ホランドの理論をカウンセリングで活用する場合、カウンセラーは、このタイプはこの職業と。短絡的にクライアントと職業を結び付けてしまう可能性があります。決して決めつけにならないように、クライアントの話をよく聞き、クライアント自らが自分の傾向を見い出していくことが大切です。特に、前述したように1つのタイプに限定せず、クライアントの可能性を広げるためにも、3つのコードの組み合わせでクライアントのパーソナリティをとらえるなどの工夫が必要です。
また、カウンセラーは、自分のタイプと反対のタイプには共感することが難しい場合があります。偏った見方を自分がしていないか留意しながら、クライアントに接することが大切です。
重要
ホランド
1952年ミネソタ大学で教員博士号を取得、その後5年ほどカウンセラーとして働き、その後研究の道に進み、ジョンズ・ホプキンズ大学などで教鞭をとり、1980年に退職後はテストの開発と理論の発展に専念した
パーソナリティ・タイプ
現実的タイプ
研究的タイプ
芸術的タイプ
社会的タイプ
企業的タイプ
慣習的タイプ
パーソナリティ・タイプの発達
VPI職業興味検査

ローのパーソナリティ理論 TEXT1-P144

欲求段階と職業
ローは、職業とパーソナリティの関係について広範囲な研究を行いました。ローは、パーソナリティを形作るものとして、個人の身体的能力、教育レベル、親の経済状況、親の養育態度など、さまざまな要因と職業とにどのような関連があるのかを研究しました。また、職業をマズローの欲求段階説をもとにとらえたことも特徴的です。ここでは、ローの、マズローの欲求段階説をもとにした職業観と、多くのパーソナリティと職業の関係の研究から、親の養育態度の影響について学びます。
マズローの欲求段階説
マズローは、人間の欲求を、以下のように5つの欲求の階層に整理しました。
①生理的欲求飢え、喉の渇き、保護、性行動
②安全欲求防衛、身体的・感情的危害からの防御
③社会的欲求(所属と愛情)愛情、所属、受容、友情
④尊重(承認と自尊心)名声、自己信頼、承認、自分自身への尊厳、自律、達成、他者からの権威承認、注目を集めること
⑤自己実現その人の素質・潜在能力を最大限にし、その人が生まれながらに持つ大望を成就すること
マズローは、自己実現という概念を重視しました。仕事を通じ、自己実現の最も高いレベル実現している人は実際には少なく、むしろ自己実現を追求する志向性の有無が重要視されるといわれています。彼は、自己実現の定義として、以下の4点をあげています。
①病気からの解放
②基本的欲求の満足
③自己の能力の積極的利用
④特定の価値観に動機づけられ、それを得ようと努力模索していること
欲求段階と職業
ローは、マズローの欲求段階説を職業の観点から解釈しました。
①生理的欲求食物、飲み物を得るため
②安全欲求住居、老後の貯蓄を得るため
③社会的欲求職場への所属
④尊重仕事の成功による努力の効力感、職業につくことによって得られる社会的地位
⑤自己実現仕事を通じての自己実現
ローは、職業は、欲求段階説を実現するための資源であるが、生理的欲求や安全欲求を満たすだけのものでなく、より高次の欲求を満たすためのものであるとしています。また、欲求段階が高い仕事ほど、職務満足度が高くなるとも述べています。だからこそ、人生の中で職業がいかに重要かということ、職業選択がいかに大切であるかを主張しています。
職業選択と個人差
ローは、職業選択には、以下の個人差が影響するとしました。
①生物学的個人差容姿、身体能力、障害、人種、性別
②心理学的個人差性格、知能、能力、興味
③社会学的個人差教育、家族の職業、宗教、文化
さらに、職業を8つのグループに分け、さらにそれぞれを責任性と能力で6つのレベルに分類し個人差の傾向が同じ人は似た分野およびレベルの職業を選ぶとしました。
職業選択と親の養育態度
ローは、パーソナリティを形成するさまざまな要因と職業の関係について研究しましたが、その中でも、親の養育態度と職業の関係は、ユニークな研究としてとりあげられています。まず、ローは親の養育態度を3つに分類しました。
過保護型親の関心が直接子供に作用するような養育態度、過保護、要求過剰などがこれにあたる。過保護型の場合、子供の生理的欲求はすみやかに満たされるが、愛情・尊敬の欲求はそれほどでもない。また、欲求過剰型の場合も過保護型とほぼ同様であるが、それに加えて、子供が親の期待どおりの達成を示すことが求められている。
拒否型親は子供に感心を示さない。親が子供の求めることを無視したり、愛情を与えなかったりする。拒否型の場合、子供の欲求は満足されない。程度の違いにもよるが、愛情に対しての欲求不満の方が生理的欲求不満よりも強く影響を与えることがある。
受容型親が子供に対して関心を払う、払わないは別にして、子供のすることに受容的な態度を示す。受容型の場合は、すべての欲求を満足させることができる。
ローは、3つの養育態度と職業選択との関係を以下のように考えました。対人志向職業(たとえば、サービス関連職)につくことを望む人は、温かい対人関係を築くことに欲求をもっており、過保護型もしくは子供に関心を払っている受容型の家庭に育つ可能性が大きく、また、非対人志向職業(たとえば科学者)は、一般的には対人関係をもたない職業であり、拒否型もしくは子供に感心を払わない受容型の家庭から育つ可能性があるとしています。
ローはその後、このような関連性について、一部の職業群に関しては言えるが、認めにくい職業群もあるとしています。彼女の理論は、その後の実証的研究で確証されたとは言いがたいのですが、進路選択と養育態度との関連性の研究には正面から取り組み、他の多くの研究を刺激してきたことと、マズローの欲求階層説を取り入れ、その理論化をはかったことなどのユニークな点が評価されています。
重要
ロー
マズロー(1908-1970)
アメリカの心理学者。ニューヨーク生まれ。人間性心理学の代表的存在とされる
<欲求段階説>
①生理的欲求
②安全欲求
③社会的欲求
④尊重
⑤自己実現
<親の養育態度>
過保護型
拒否型
受容型

テキスト レッスン5 発達論的アプローチ

発達論的アプローチを学ぶことによって、クライアントが現在、人生のどのような時期にあり、どのような課題をもっている可能性があるのかを知ることができ、その課題を克服するための援助を行うことができます。

発達論的アプローチの定義 TEXT1-P152

発達とは
心理学で用いられる「発達」は、「人間が生まれ、その成長の過程において、心身の形態、構造、機能が質的、量的に変化すること」をいいます。つまり、人間は生まれてから死ぬまでずっと体の形、大きさ、重さ、機能などの身体面が変化するだけでなく、使う言葉、ものの考え方、感情などの心理面もともに変化しつづける存在ととらえ、その過程を「発達」と呼んでいます。
発達心理学の定義
かつては、一般的な発達が成長、拡大されるのと同様に、心理学における発達も、成年期までは上昇し、それ以降は下降すると考え、発達は生まれてから成年になるまでと定義していました。しかし、近年の老年についての研究から、老年期が単なる衰退の過程ではないということがわかってきました。ことことから、「人間は生涯を通じて発達する」という生涯発達の概念が生まれ、現在では、発達とは、「出生から死に至るまでの生涯にわたる過程」と捉えることが一般的になってきています。また、この人間の発達を研究する分野を「発達心理学」と呼びます。
キャリアカウンセリングにおける「発達」は、この「生涯発達」の考え方を基本にしている理論が多くなっています。
発達論的アプローチ
アメリカでは、20世紀中旬まで、キャリアに関する理論は職業興味を中心として研究され、職業選択は人生における一つの出来事として位置づけられていました。1951年にギンズバーグらは、職業選択を含め、キャリアは人生という一連の過程の中で継続的に行われる発達的プロセスであるという「キャリア・ディベロプメント理論」を提唱しました。現在では、この「キャリアは人生全体を通じて進んでいくものである」という考え方が、キャリアカウンセリングの基本となっています。
発達論的アプローチでは、人生を通じたキャリアの中で、人はおもに、どの時期にどのような課題をもつことが多いか、についての研究がなされています。
重要
発達
生涯発達

エリクソンのアイデンティティ発達理論 TEXT1-P154

アイデンティティ
エリクソンは、フロイトの考えた性格形成の過程の理論を人生全体に拡張し、それまでは発達とは生まれてから青年期までの上昇的変化が起こる時期を指していたものを、老年期を含む死までの生涯にわたる生涯にわたる過程と捉え、その生涯を通じた発達を、自我と現実との関係の中で、アイデンティティ(自我同一性)を形成していく過程としました。
アイデンティティの明確な定義は困難とされていますが、エリクソンは以下の3つによって定義される自己意識の総体としています。
自己の斉一性この自分はまぎれもなく独自で固有な自分であって、いかなる状況においても同じその人であると他者からも認められ、自分でも認めること
時間的な連続性と一貫性以前の自分も今の自分も一貫して同じ自分であると自覚すること
帰属性自分はなんらかの社会集団に所属し、そこに一体感をもつとともに他の成員からも是認されていること
アイデンティティは、日常的な言葉では、「自分は自分である」「これこそがほかならぬ自分である」と自覚できていること、「この自分でよい」という自己肯定感と、「これからも自分でやっていける」という自信があること、「この自分はまわりから受け入れられている」し「この自分は社会にとって意味のある人間である」という自己存在感や有用感をもてること、「この自分が好きである」と受容でき、「自分らしさがある」という実感があることとされています。
エリクソンは、この逆の、自己が混乱し、自分の社会的位置付けを見失った状態を「アイデンティティ拡散」としました。
各時期における発達段階
エリクソンは、人の一生を8段階に分け、各段階に対立する心理・社会的危機があるとし、その克服を発達課題と想定しました。
発達段階心理・社会的危機重要な関係の範囲基本的強さの傾向克服できなかった時
1.乳児期基本的信頼 VS 基本的不信母親的人物希望引きこもり
2.幼児期初期自律性 VS 恥、疑惑親的人物意思強迫
3.遊戯機自主性 VS 罪悪感基本家族目的制止
4.学童期勤勉性 VS 劣等感近隣 学校適格不活発
5.青年期同一性 VS 同一性拡散仲間集団と外集団 リーダーシップの諸モデル忠誠役割拒否
6.前成人期親密 VS 孤立友情、性愛、競争、協力のパートナー排他性
7.成人期生殖性 VS 停滞性労働と家庭世話拒否性
8.老年期統合 VS 絶望人類、私の種族英知侮蔑
そして、その危機の克服が重要であり、克服によって得られるものを「基本的強さ」とし、克服できなかった場合に生じる問題についても整理しました。各発達課題は、次の発達課題を獲得するための基礎になっており、人間は、この各段階における発達課題を克服しながら、次の発達段階に進むとしています。
エリクソンは自我同一性を確立する青年期を特に重要視しました。青年期は、「自我同一性を確立することで自分が何者になるかを選択する時期」としています。同時に青年期は、自我同一性の獲得に専念するために成人としての義務や責任を猶予されている時期(モラトリアム)と位置づけられています。
キャリアカウンセラーとして、クライアントが現在、発達段階のどこにいるか、発達段階とその克服がなされているかどうかという視点でクライアントの問題をとらえることが、クライアント理解の一つの視点となります。
重要
アイデンティティ
エリクソン(1902-1994)
精神分析家、デンマーク人の両親のもとに生まれる。A.フロイト(フロイトの娘)より児童精神分析家としての訓練を受け、1933年の渡米後は、ハーバード大学などで臨床、教育に従事しました。
フロイト(1856-1939)
精神科医、精神分析の創始者
発達課題
基本的強さ
モラトリアム

ギンズバーグの発達理論 TEXT1-P156

ギンズバーグのキャリア発達プロセス
発達的キャリア・ディベロプメントを理論化した最初の人物であるギンズバーグらは、経済学者、精神科医、社会学者、心理学者によって構成された研究グループです。彼らは、「職業選択は、長い年月をかけた発達的プロセスである」と述べ、発達プロセスを整理しました。
時期年齢特徴
空想期児童期(0~11歳)前半は、純粋な遊びの中で仕事や職業について学び、後半になると仕事に関する概念ができてくる。職業に対する初めての興味関心・理解、衝動や欲求を直接的に従属させる職業を選択
試行期青年期(11~17歳)自分の興味・価値観・能力など主観的な要素を仕事と結びつけて考えることができるようになる
興味ステージ物事に対して、好き嫌いをつける
能力ステージ自分がよくできることを職業とつなげて考える
価値観ステージ職業に関する理解がより明確になる
過度期ステージ職業選択に関心をもつようになる
現実期成年期(17~20代前半)職業選択にふさわしい自分の能力・価値観などを確認し、さらに自らを発達させることができるようになる。機会や限界といった環境的要因を考慮して選択する時期
探索ステージ職業の選択肢の可能性を探索する
結晶化ステージ1つの仕事を選択するための条件が具体的になる
特殊化ステージこの仕事をするために、より専門的な知識を身につける、もしくは仕事をしはじめる
ギンズバーグは、職業選択のプロセスについて以下の3つを指摘しました。
①職業選択は、発達のプロセスである
②そのプロセスは非可逆的である
③職業選択は、個人の興味・能力・価値などと現実との妥協のプロセスである。自我が重要な役割を果たす

ギンズバーグは、理論を最初に発表してから20年後の1972年に行った改定で、以下の変更を提示しています。一つは、職業選択のプロセスは、成年期で終了せず、むしろ、目標の変更や仕事上の意思決定や変化など、個人の職業人生を通して起こるものだと示唆しています。また、彼は職業選択が非可逆的であるという主張を弱めました。さらに、妥協という用語を最適化に置き換えました。その意味は、変化する自己と変化する環境の間で、職業に対する適応度を向上させようとする特徴にあります。仕事やその他の人生の局面で、変化が起こり続ければ、人は、経済的な利益と心理的コストとのバランスを取るために、新たな意思決定と向き合わなければなりません。

理論改訂後でも、キャリアという概念の基本は同じであり、彼は職業選択について以下のように述べています。「職業選択は、仕事から満足を得ようとする者にとって、生涯にわたる意思決定のプロセスである。それゆえ、彼らは変化する自分のキャリア目標と世の中の職業との現実をどのように折り合いをつけていくか、繰り返し再評価することになる。

ギンズバーグはそれぞれの時期を年齢で表していますが、あくまでアメリカにおける一般的発達年齢であり、個人差があるということを理解しておく必要があります。
重要
ギンズバーグ

スーパーのキャリア・ディベロプメント理論 TEXT1-P158

ライフ・ステージ論
スーパーは、ギンズバーグなどの研究を集約・発展させて、幼児から老年期までのキャリア・ディベロプメント・プロセスを、成長段階・探索段階・確立段階・維持段階・下降段階の5つの発達段階に整理しました。この大きな一連の流れをライフ・ステージと呼び、各ステージの中に、さらに細かくサブステージがあるとしました。また、スーパーはこの理論を発表した後、成長、探索、確立、維持、下降の各ステージをマクシサイクルと呼び、新たにミニサイクルの概念を追加しました。ミニサイクルとは、各マクシサイクルを構成する各段階の間に挿入される過渡・トランジションの時期における意思決定過程のサイクルのことです。それぞれの内容について以下の表で詳述します。なお、ここでの年齢分類はおおよそのもので、個人差が相当あることに注意する必要があります。
ライフ・ステージミニサイクルの内容
下降(解放)
65歳以降
ミニサイクル下降(解放)労働時間の減少
維持楽しいことだけを続ける
確立本当にやりたいことを始める
探索待遇の良い定年後ポストを見つける
成長非労働的役割の開発
精神的・肉体的に衰え、職業世界から引退する時期。帰属するところがなくなるという自覚は、本人にとっては深刻な恐怖となる。それを解消するために新しい役割を開発することが課題となる。
維持
45~64歳
ミニサイクル下降(解放)もっとも基本的な行動のみになる
維持自分の実力を信じ、競争が起こる
確立新たなスキルを開発
探索仕事上、新しい問題点を発見する
成長個人の限界を理解する
45歳に達するまでに、自分のキャリアを確立する。キャリアにおける成功が得られれば、この時期は自己実現の段階となる。安定志向が高まり、リスクを冒すような危険を避けるようになる。保守的になり、既存のキャリアを維持することに関心を持つ。
確立
25~44歳
ミニサイクル下降(解放)スポーツに使う時間が減る
維持仕事の安定性が強く求められる
確立安定した仕事をする
探索自分がやりたい仕事を探す
成長他人との関係構築
試行と安定期(25~30歳)はキャリアの初期であり、自分の適性や能力について現実の仕事とのかかわりの中で試行錯誤を繰り返す時期である。31~44歳では試行期と安定期の後で確立していくことになる。自己の職業的専門性が高まり、ある職歴の中に位置づけられ安定し昇進をする。一層自分の能力・適性を生かすことに関心を持ち、転職する可能性もある。特に専門職の場合は、試行期がなく、いきなり確立期に入る人もいる。
探索
15~24歳
ミニサイクル下降(解放)自分の興味には時間をかけない
維持職業選択を確かめる
確立ある特定職業分野を選択するようになる
探索より多くのチャンスを得る
成長現実的な自己概念の開発
学校教育やレジャー活動、アルバイト、就職、転職などから、試行錯誤をともなう現実的な探索を通じて職業が選択されていく時期である。
成長
0~14歳
家庭や学校での経験を通じて、仕事に関する空想や欲求が高まり、職業への関心をよせる時期である。
ライフ・キャリア・レインボー
スーパーは、ライフ・ステージ論を提唱した後、このモデルが結婚や育児などによって生活に大きな変化が起こることの多い女性にはあてはまならいこともある点に気づき、「ライフ・キャリア・レインボー」を提唱しました。
ライフキャリアレインボーには、2つの大きな要素があります。「ライフ・スパン」と「ライフ・ロール」、「ライフ・スペース」で、それぞれ人生の「時間」と「役割」、「空間(役割を演じる環境)」のことを指しています。スーパーは、キャリアの定義を「人生のそれぞれの時期(ライフ・スパン)で果たす役割(ライフ・ロール)の組み合わせである」と言っています。
ライフ・スパン
ライフ・スパンは、前述のライフ・ステージにあたります(レインボーの一番外側に、成長、探索、確立、維持、下降のライフステージが反映されています)。
ライフ・ロール
ライフ・ロールは、子供、学生、市民、労働者、配偶者、親、余暇を楽しむ人などの人生における役割のことです。人は、同時に複数の役割をライフ・スパンの中で果たしています。たとえば、職場での労働者の役割があり、仕事を終え家に戻ると、配偶者や親、あるいは子供などの役割があり、休日になると自由時間(余暇)を楽しむ人という役割をもちます。多数の役割をもっている人にとっては、その中の一つ一つの役割に十分な時間をかけることは非常に難しいことです。逆に、役割が減少すれば、それぞれの役割に割く時間と労力を増やすことができます。また、各役割は相互に影響しあっています。
ライフ・キャリア・レインボーとキャリアカウンセリング
このように考えると、キャリアに関する相談は、職業に関するものだけではないことがわかります。転職の相談は、実は同時に父、母としての役割に時間をとるための相談かも知れません。相談に来るクライアントは、職業人としてだけではなく、その他さまざまな役割を担っていること、そしてそれらの役割が他の役割にも影響を与えていることを、キャリアカウンセラーは念頭において支援することが大切です。
自己概念
スーパーは、人がある職業において自己を確立するには、まず自己概念を形成すること、その自己概念を職業にあてはめること、そしてその自己概念を実現することが重要と述べています。
では、自己概念とは何でしょうか。自己概念とは、「自分が自分自身のことをどのような人間であると見ているか」をいいます。たとえば、「自分は数学が得意である」「自分は意志が強い」「自分は誠実であることを大切にしている」など、自分の性格、興味関心、価値観など自分を説明する概念をいいます。
スーパーは、まず自分の自己概念を整理し、自己概念を満たす職業は何かを考え、その職業を通じて自己概念を確立していくことが、職業人として確立する過程であるとしました。そのため、自己概念と職業の一致度が高いほど、職務満足度は高まるとしています。自己概念は、自己と他者の違いを認識すること、モデルとする他者への同一視、社会的役割を果すことによって形成されていくとします。
そして、生涯とは、自己概念を変更しながら、それに適応し、自己概念を明確にしていく過程であるとしました。
クライアントの中には、まだ自己概念が明確でなかったり、言語化されていなかったりする人がいます。キャリアカウンセラーは」、カウンセリングにおいて、受容的にクライアントの話を聞くことで、クライアントが自己概念を明確にしていく過程の援助をすることが可能です。また、キャリアカウンセラーの役割は、クライアントが自己概念と人生における役割をよりよい方向で描き、現実的な職業世界での自己概念の実現可能性を探ることを支援することであると考えられます。
アーチ・モデル
90年代の初め、スーパーは、自己概念が生物学的、心理学的、社会経済的要因の影響を受けて作られていることを説明するためにアーチ・モデルを作りました。
アーチの左側の礎石は、パーソナリティ的要素を、右側の礎石は、社会的要素を表し、一番上に「自己」が置かれ、自己を支えるものとして礎石が置かれています。
生物学的礎石から伸びている柱は、パーソナリティ的要素(たとえば要求、価値観、知能、興味)を表し、人の欲求、知能、価値観、能力、興味を含んでいます。地理的礎石から伸びている柱は、社会的要素(たとえば、経済的状況、コミュニティ、学校、家族)を表し、環境の影響(たとえば家族、学校、仲間、労働市場)を含んでいます。
2つの柱を結合する部分にあるアーチは、子供から大人までの発達段階、役割自己概念などの概念要素により作られています。アーチの要となるものは自己です。自己、つまり個人は、個人的、社会的な力の影響を受け、社会の中で自己概念の形成や、人生における役割をつくりあげているのです。
キャリア・アダプタビリティ
スーパーは、思春期においてはキャリア選択のレディネスが、暦年齢および学年につれて明らかに増加することから、思春期のキャリア発達の中心的なプロセスは「成熟」であることを見出した。成熟への推進力は、学校教育のカリキュラムであり、家族や先生の心のなかにある心理社会的な期待などである。しかしながら、学校を卒業し社会にでると、キャリア発達に対する心理社会的な推進力は、仕事の内容や条件とその変化にシフトする。このため、スーパーは、成人のキャリア発達の基本概念は、キャリア「成熟」ではなく、「アダプタビリティ(適応力)」であるとした。
スーパー理論の応用
スーパーの理論の3つの主要理論概念(自己概念、ライフ・ステージ、ライフ・ロール)によって、スーパーらは、発達課題を測定する多くのアセスメントを開発し、キャリアカウンセリングの中で活用されています。以下は、スーパーが提唱したカウンセリング・ステップの要約です。
ステップ1:アセスメント
アセスメントによって、「キャリア・ディベロプメントの段階」「キャリア・アダプタビリティ」「興味志向」「価値観」等を測定することができます。個人のキャリア・ディベロプメントをさまざまな観点から測定し、そのアセスメントの結果にしたがって適切なキャリアカウンセリングを行うことができます。
ステップ2:キャリアカウンセリング
アセスメントを終了してから、キャリアカウンセリングを初めます。
1)アセスメントデータの解釈とクライアントからの情報の統合
キャリアカウンセラーはクライアントのアセスメントデータを解釈します。また、クライアント自身からの情報を統合して総合的に解釈していきます。この解釈のプロセスは、統合的解釈と呼ばれ、その中でクライアントのライフ・ヒストリー(人生史)を明らかにしていきます。
2)カウンセリングの目標
カウンセリングの目標を決めるプロセスで、クライアントが自分の自己と人生における役割をよりよい方法で描けるように、カウンセラーは支援していきます。現実的な職業世界での自己概念の実現可能性を探ることによって、職業の選択肢が考えられます。
3)方法
キャリア・ディベロプメント課題(たとえば、探索段階、確立段階、維持段階、下降段階ごとの発達課題)と関連のあるキャリアカウンセリングの方法が推奨されます。ライフ・ステージや発達課題等も用いた多様な方法が用いられます。
4)プロセス
キャリア・ディベロプメントを促進するために、コーチング、教育、メンタリング、修正、再構成などの方法が、面接を通じて用いられます。
ライフ・ステージ、ライフ・ロールの理論は、実に包括的な概念構成です。この概念構成から、キャリアカウンセリングは生まれました。この理論に基づき開発されたカウンセリングの方法は、クライアントの最大限の発達を促進するように設計されています。
重要
スーパー(1910-1994)
ホノルル生まれ、オックスフォードに進学、卒業と同時にクリーブランド州立大の非常勤講師およびYMCAで職業紹介を担当し、雇用と労働市場人事管理を実務として習得。コロンビア大学に進学し1940年に博士号を取得。コロンビア大学教授、名誉教授、ケンブリッジにも籍を置きました。
ライフ・ステージ
サブステージ
ライフ・キャリア・レインボー
ライフ・ステージ
ライフ・スパン
ライフ・ロール
ライフ・スペース
自己概念
アーチ・モデル
キャリア・アダプタビリティ

トランジション TEXT1-P168

トランジションとは
トランジションとは、過渡期もしくは転換期のことを指します。物事が移り変わる最中で、不安や葛藤を抱えやすい時期でもあります。人生の中で、誰でも過渡期、転換期を迎えたことがあるでしょう。具体的な出来事でいうと、「進学」、「就職」、「転職」、「結婚」、「離婚」、「死別」などの大きな出来事はトランジションだといえます。つまり、「人生の重要な転換期」「ターニング・ポイント」ということです。生活状況や人間関係もしくはアイデンティティが、今までのものから別のものに変わるときといってもよいでしょう。
トランジションを学習する意義
キャリアを考えるにあたって、このトランジションの概念を学習することはとても重要なことです。なぜなら、クライアントの置かれている状況がどの段階にあるのかが理解しやすくなるとともに、過去のトランジションをどのように乗り越えたのかを知ることによって、クライアントが物事に対してどのような対処をするタイプなのかを理解しやすくなるからです。ここでは、トランジションについて述べた理論化を3人紹介していきましょう。
レビンソンの発達段階とトランジション
「トランジション」についてレビンソンの研究は、「人は、成長の終わった大人になればもう迷うことはないのか、成人期以降も人間は発達するはずである」という仮定から出発しました。彼は、成人前期から中年期の男性を面接した結果から、人間は成人期以降も発達し、みなほぼ同じ年齢段階で、同じようなトランジションを経験するということを発見しました。
レビンソンは、大きなトランジション(過渡期)として「成人への過渡期(17~22歳)」「中年への過渡期(40~45歳)」「老年への過渡期(60~65歳)」を設定し、それぞれの大きな過渡期の間に段階を置きました。
成人への過渡期(社会に出る前後の過渡期 17~22歳)
この時期は、親や社会に守られて生きるのではなく、自分で道を切り開いていかなければならないという自覚をもつようになる時期です。「私は誰か?」という問いに対して、「私は他の誰でもない、かけがえのない自分である」ことを確信できなければなりません。そして、社会人として、自分自身が選択した役割を誠実に果たしていく必要があります。その時期に直面する課題は、「アパシー」と「離人感」です。アパシーとは、他人と比較して自分は劣っているのではないかと思い込み、無力感、無価値を感じることです。一方、離人感とは、自分が自分であると思えなくなる、自分と身体が分離しているような気がする、自分が誰かに操縦されているような気がすることを指します。
30歳前後の過渡期(補足)
無限の可能性が開けていた20代とは違い、さまざまな社会的制約条件を受け入れるなかで、急速に「可能性が限定される」ように感じる時期です。キャリア、パーソナルライフ両面にわたって真剣に一つの現実的な選択をしなければなりません。そして、家庭という最小単位のなかで、夫、妻、父、母、子供など引き受ける社会的な役割が増えていく時期です。「焦燥感」、「さまよい」、または、「無力感」は、30歳前後の過渡期の課題とされています。
中年への過渡期(40歳前後の過渡期)
レビンソンは、この時期を「人生半ばの過渡期」と呼び、最も重要としています。本当の自分らしさの模索・葛藤を通じて、真の自己との折り合いをつける段階です。自分が40年間防衛してきたものが守りきれなくなり、自分が崩れてしまうような恐怖感を無意識に感じます。それを経て、それまでの自分が捨ててきたものと後半生の自分を統合し、自分自身、自分にとっての世界、自分と世界の関係を「肯定」して生きていかなければならない時期です。「真の自己」を生きていくという「個性化への道」を歩み始めなければなりません。たとえば社会の中で自分を見つけようとする夫と、家庭にあって内面的な適応の中で自分を見つけようとする妻とのギャップが顕在化し、夫婦はより深いパートナーシップを獲得しなければならないというようなことが起こります。この時期は、①過去を見直す ②生活構造を修正する ③若さと老い、破壊と創造、男らしさと女らしさ、愛着と分離の発達課題を統合することの3点が重要な課題とされています。
老年への過渡期(リタイア前後の過渡期)
この時期の課題は、「死の受容」と「新たな生きがいの獲得」です。さまざまな愛するものとの別れがやってきます。そして「死にゆくものとしての自分」を受け入れなくてはなりません。自分の親がもっていた役割を、今度は自分が引き受け、次の世代を育てるものとしての新たな役割を構築しなければなりません。社会から葬られるのではないかという恐怖感と、役割の喪失感によって孤立化が進み、過去への引きこもりもしばしば発生します。
レビンソンは、人間の生活構造は永続的ではなく、「一つの生活構造は7,8年を超えて続くことはない」と述べています。トランジションは次の生活構造へ移っていく準備段階にあることを示しており、それまでの生活構造を変え、新しい生活構造を構築することが中心になることを意味しています。トランジションの時期は、必ずしも混乱するということではなく、誰でも自然に通過していく過程であるとレビンソンは結論づけています。
ブリッジスのトランジション3段階論
ブリッジスは、厳密な年齢で発達段階を区切ることはできないとし、年齢段階にかかわらず生じるトランジションのプロセスを3段階に分けて考えます。
第1段階:何かが終わる時
トランジションは、必ず何かがうまくいかなくなるところから始まります。その時期には、それまでずっと慣れ親しんできた場所や社会的秩序(活動、人間関係、環境役割)から引き離されて、もともともっていた目標や計画に対する意欲がなくなり、混乱、空虚感を感じ、時として自分自身を見失うこともあります。
第2段階:ニュートラル・ゾーン
内的な再方向づけの時です。その時期には、昔の現実は色あせ、過去の成功に確信がもてなくなり、深刻な空虚感を感じます。夢と夢の狭間、一時的な喪失感ともいえます。
第3段階:何かが始まる時
「始まり」は、「終わり」と比較してあまり印象に残らない形で生じます。ただ「何かが違うな」というような変化を若干感じる程度かもしれません。「ほかにも楽な選択がある」という甘い誘惑に抵抗しながら、少しずつ目標に到達するまでのプロセスを踏んでいく状態のことです。
ブリッジスは、「トランジションは、人生のある章を終わらせることだけではなく、次のステップに進むために何が必要かを見出すこと」が重要であると強調しています。また、トランジションを乗り越えるには、逃げずにそこにとどまることも大切な方策であると述べています。人生は、いくつかの局面を通過していきます。新しい仕事を始める時には、自分自身を新しい状況に適応させる必要があるため困難が生じます。たとえば、リストラされた時に生じる内面の変化は自分から仕事をやめる時とまったく違いますし、最初はおもしろかった仕事が嫌になる時、あるいは、最初の就職、退職、配置転換などには、さまざまな感情が生じることは想像できるでしょう。人々に苦しみをもたらすのは、新しい状況へ自分を適応させようとしている時です。
トランジションという概念は、人生全体を考えた時に大きな意味を持ちます。なぜなら人生は、トランジションがあるからこそ、前進したり開花したりするからです。「終わり」から「始まり」に進むというパターンは、人が変化し成長する過程を表しているのです。
シュロスバーグの4-Sトランジション・モデル
シュロスバーグはトランジションを独自に定義し、トランジションを乗り越える戦略として、4-Sトランジション・モデルを提唱しました。
トランジション
シュロスバーグのトランジションの定義は、レビンソン、ブリッジと異なり、トランジションを年齢や発達段階によってある程度予測できるものではなく、個別性が強いものであることとして捉えました。つまり、トランジションとは、「ある年齢になると誰でも経験すること」ではなく、「その人の人生のさまざまな時期で発生する固有のできごとである」と定義しています。
シュロスバーグによると、人生はトランジションの連続から成り立ち、人のキャリアは、それを乗り越えるプロセスを経て形成されていくとしています。
イベント・ノンイベント
そして、トランジションを、「イベント」と「ノンイベント」に分類しています。イベントとは出来事(=誰でも起きること、その人固有で起きること)、ノンイベントとは、あることが起きて欲しいと期待していたものの、事が起きなかったことです。たとえば、イベントは、就職、結婚、肉親との死別、転職、離婚などです。また、イベントは、さらに「起こると予測していたもの」と「予測していなかったもの」に分類されます。たとえば、就職や結婚は自分で「起こると予測していたイベント」であることが多いですが、「突然のリストラ」や「事故」などは、「予期していなかったイベント」になります。
ノンイベントは、たとえば、結婚すると思っていたができなかった、昇進できなかった、子供ができなかったというようなことをいいます。
トランジションへの対処
トランジションが起こると、①ライフ・ロール、②人間関係、③日常生活、④自己概念の変化が一つまたは二つ以上起きるとされています。こうした変化は、人によりプラスの場合もあれば、マイナスの場合もあります。シュロスバーグは、トランジションを乗り越えるためには、このマイナスの影響を最小にし、状況を冷静、客観的に受け止め対処することが重要としています。
シュロスバーグは、トランジションに対処する2段階のプロセスを提唱しています。
(1)4-Sについて検討する
4-Sとは、状況(Situation)・自己(Self)・支援(Supports)・戦略(Strategies)を指します。
(2)行動に移す
キャリアカウンセラーは、クライアントがどのようなトランジションにいるか、またそれはクライアントにとって、予期していたものか、予期していなかったものかなど、クライアントが現在置かれている状況をこの理論で整理することができます。また、その対処の方策を4-Sを活用してクライアントと考えていくことも可能です。
シュロスバーグの4-S解説
SITUATION(状況)
きっかけ現在の状況が生じた原因は何か? 誰が選択したことなのか?
時期現在の状況は社会的に予測できたことか? 突然に起こったことか?
期間永続的なことか? 一時的なことか?
以前の経験同様の過渡期を乗り越えた経験は? そのときの様子や感情は?
他のストレス現在の問題以外に抱えているストレスは?
受け止めかたその状況をどう受け止めているのか?
クライアントにとって好機なのか、打撃なのか?
SELF(自己)
仕事の重要性クライアントにとって、仕事はどの程度重要か?
仕事の何に興味があるのか?(内容・給与・名誉等)
仕事と他の興味とのバランス仕事、家族、趣味、コミュニティ等、生活全般の中でのバランスをどう考えているのか?
変化への対応どのようにして変化に対応しようとしているのか?
積極的に再訓練を受けるのか? 考え方を変えるのか?
信念クライアントは自分自身に自信を持っているか?
新しいことに挑戦しようとしているか?
人生の意義クライアントは人生にどのような意義をもっているのか?
なんらかの使命を感じているのか?
SUPPORTS(支援)
肯定的感情クライアントを好きな人から、どんな人だと言われているか?
クライアントを理解している人から、どんなことができると言われているか?
激励クライアントの成功を期待している人はだれか?
日ごろ肯定的な指導を与えている人は何と言うだろうか?
周囲の楽観的見通しを持っている人は何て言うだろうか?
情報何についての情報が欲しいのか?
欲しい情報を得るには、どんな手段・方法があるか?
紹介機関支援を受ける専門機関や特定のグループはあるか?(医療機関、財政支援、レイオフされた人や失業した人に対する援助について知っている人や機関)
キーマンクライアントに対して積極的にコンタクトしてくれる人はどんな支援をしてくれそうか
実質的援助クライアントが行動を起こす際にどんな援助が必要か?(子守、資金の貸付、交通手段、手紙や履歴書の代書などをしてくれる人はいるか)
STRATEGIES(戦略)
状況を変える対応職探し、トレーニングを受けるなど
問題の意味を変える対応失業したことを、より満足できる仕事を見つける好機だととらえるならどうだろうか?
問題が起こった後のストレス解消の対応リラックス方法、運動など、欲しい情報を得るには、どんな手段・方法があるか?
重要
トランジション
レビンソン(1920-)
臨床・社会心理学者。ハーバード大学などを経て、1966年エール大学医学部の心理学教授。コネティカット精神衛生センター心理学部長、社会心理学、精神医学研究所長などを歴任。主著は「ライフサイクルの心理学」
ブリッジス(1933-)
米国の心理学者。人間性心理学会会長も務めた。大学教授を辞め、トランジションセミナーを開始して、好評を博す。現在、コンサルティング会社の経営に携わっている。
シュロスバーグ(1929-)
米メリーランド大学教育学科名誉教授。1999年度米国キャリア・ディベロプメント開発協会会長
4-Sトランジション・モデル
イベント
ノンイベント

シャインのキャリア理論 TEXT1-P176

組織と個人の関係からキャリアを考えたシャインのキャリア・サイクル・モデル、キャリア・アンカーを学ぶ
キャリア・サイクル・モデル
3つのサイクル
シャインは、個人の人生を3つの領域に分けそれぞれにサイクルがあるとしました。以下の3つのサイクルが相互に影響を受けて人生全体のライフサイクルを構成しているとしました。3つのサイクルとは以下のとおりです。
①生物学的、社会的なサイクル
②家族のサイクル
③仕事・キャリアのサイクル
生物学的、社会学的なサイクルとは、身体的な加齢や、社会に求められる年齢相応の振る舞いなどを指し、身体的成長を経て最後は死に向かう過程です。家族のサイクルとは、1つの家族が生まれ、出産や子供の教育などを経て、子供自身が独立していくという目標に向かいながら、また年老いていく過程を指します。仕事・キャリアのサイクルとは個人にとっての仕事を中心とした、組織への貢献から引退へと進む世界を指します。
また、それぞれのサイクルには、発達段階に応じた課題があるとしました。
キャリア・サイクル
ここでは、3つのサイクルのうち、特に、仕事・キャリアのサイクルについて紹介します。シャインは、組織と個人のキャリアの関連の視点で段階と課題を整理しました。
発達段階内容
1.成長・空想・探求 0~21歳職業選択のために自分の興味志向を発見したり、能力を開発するために、教育・訓練を受けたりする。職業に入る準備段階
2.仕事の世界へのエントリー 16~25歳職業、組織に入る時期
実際に就職活動を行い、職場のメンバーになる組織での自分の位置を見つけるようになる
3.基本訓練 16~25歳仕事の現実に直面し、動揺を覚えることもあるが、徐々に職場メンバーとして認められるようになる。組織と個人の相互受容の段階
4.キャリア初期 17~30歳徐々に、責任のある仕事を引き受けるようになり、正式なメンバーとして認められる
5.キャリア中期 25歳以降スペシャリスト、またはジェネラリストのどちらを進むのかの方向性を決めて、組織の中で確固とした立場を築いていく段階、うまく進む人もいれば、この段階に長くとどまる人も出てくる
6.キャリア中期の危機 35~45歳自分にとって、価値のあることに気づく、また自分の中の仕事の位置づけを決める時期でもある
現状のままとどまるか、自分の夢や希望をかなえるために、出直すか対立する時期
7.キャリア後期 40歳~引退今まで培ってきたものに加え、経験を活用できるようになり、自分の知識を他者に伝える役割をもつ指導的役割をもつ指導者的役割を果たす時期
8.衰えおよび離脱 40歳~引退組織内での影響力や、能力の減退を受け入れ始め、引退の準備を始める時期
9.引退引退による、ライフ・スタイルの変化を受け入れ、アイデンティティや自尊心の変化に対応する
また、このモデルでは、組織で働く人をおもな対象とし、専門的職業や自営業の人々などについては、あてはまらない場合もあります。各段階にとどまる時間的長さには、仕事内容や個人のパーソナリティによって個人差があるとされています。
キャリアカウンセラーは、クライアントが所属している組織とクライアントの関係やクライアントの抱える問題を理解するときに、この発達段階を参考にすることができます。ただ、これはあくまでも参考であり、すべての人がこの段階に当てはまるとは限りません。
キャリア・アンカー
8つのキャリア・アンカー
キャリア・アンカーとは、シャインが提唱した概念で、個人が選択をしなければならない時に、絶対に放棄することのできない「欲求・価値観・能力など」のことで、その人の核となるものです。船をしっかりと停留させるものがアンカー、錨です。つまり、人のキャリア選択の際に最も大切にしているもの、譲れないもので、その人のキャリアの積極的定着促進要因といいます。
仕事の経験や周囲からのフィードバックを積み重ねることによって、一人ひとりの内面では整理・洞察が進み、合理的かつ自律的にキャリアを決定する基盤-自己イメージ-が出来上がっていきます。キャリアに関する自己イメージには次のような3つの側面があります。
①才能と能力:自分は何ができるのか。どのような仕事が得意なのか、また苦手なのか
②動機と欲求:自分が本当のところやりたいことは何か、仕事を通じて何を求めているのか
③態度と価値:どのようなことをやっているの自分に意味を感じるのか。何に価値を感じるのか
シャインは、個人の内面で、無意識にこの自己イメージの相互作用によってキャリアに対する根源的な志向が固まってくるとしています。シャインはこのキャリアに対する指向を「キャリア・アンカー」(職業生活の錨)と名づけました。そして研究の結果、キャリア・アンカーは、8つのカテゴリーに分類することが可能であることがわかったのです。
専門コンピタンス(TF)
特定の分野(企画、販売、人事、エンジニアリングなど)で自分の能力や技術を発揮し、自分の野力を活用することで自分らしさを確立すること。その分野で新たな挑戦をし、成長していくことを最も幸福に感じます。
経営管理コンピタンス(GM)
さまざまな人の力を結集し、成長を生み出し、その成果に責任を負い、信頼に応えること。組織内のさまざまな機能を相互に結びつけ、対人関係を処理し、集団を統率する能力や権限を行使する柔軟な能力を発揮し、組織の期待に応えることができた時、最も幸福に感じます。
自律(AU)
組織のルールや規則に縛られず、枠組みを自分で決め、自分のやり方で仕事を進めていくこと。組織に所属している場合、仕事のペースを自分の裁量で自由に決めることができるようにしたいと希望します。
安定(SE)
キャリアを安定させることによってリラックスし仕事に「満足度」をもつこと。雇用保険、年金、退職手当等の経済的安定を得ること。一つの組織に勤続し、終身雇用の保障が得られる限り、組織側の要望では何でも前向きにやるといった、組織への忠誠や献身などがみられます。
起業家的創造性(EC)
何か新しいものを創りだすこと。障害を乗り越える能力と意気込み、リスクを恐れず何かを達成すること。何かを築き上げ、それが自分の努力によるものだという実感を得たいという強い欲求が主な原動力です。
社会への貢献(SV)
暮らしやすい社会の実現、他者の救済、教育など、価値のあることを成し遂げること。転職してでも自分が関心をもっている分野で仕事をする機会を追い求めるでしょう。自分の価値観に反する組織のもとでは働かず、自分の理想や主義主張のために働くことができないなら、昇進も拒むでしょう。
チャレンジ(CH)
一見解決困難と思える問題の解決に取り組むことや、手ごわい相手に打ち勝とうとすること、あるいは難しい障害を克服しようとすることなど。不可能に打ち勝つプロセスが重要なのです。知力を要する仕事において純粋にやりがいを感じる人、人と人との競争にやりがいを感じる人などが含まれています。目新しさ、変化、そして難しさ自体が目的になります。
全体性と調和(LS)
個人的な欲求、家庭の要望、自分の仕事に求めるもののバランスや調整をうまくとることに精力を傾けます。全体として自分のライフワークをまとめることができるようにしたいと考えています。したがって仕事を考えるときは、そうしたことが思いどおりにできる状況をつくり出そうとします。
組織内キャリアの移動
シャインは、組織内でのキャリアの移動を円錐状のモデルで表しました。この3次元モデルには、円の周囲を沿う横の移動と、円の中心に向かう中心への移動と、垂直方向に向かう縦の移動があります。
重要
シャイン
米マサチューセッツ工科大学経営大学院教授。産業組織心理学を専門とする
キャリア・サイクル・モデル
キャリア・アンカー

キャリアカウンセリングへの応用 TEXT1-P182

発達論的アプローチのカウンセリングへの応用を考える
発達論的アプローチの留意点
まず、理論をカウンセリングに活用するうえで、心がけたいことは、一つの理論に固執してクライアントを一面的にしか理解できないようなことを避けることです。現在のクライアントの状況に応じて、理論を背景にして多面的に理解するように務めることが大切です。

テキスト レッスン6 社会的学習理論アプローチ

社会的学習は、心理学辞典によると、「一般に、他者の影響を受けて、社会的慣習、態度、価値観、行動を習得していく学習」を指します。

社会的学習理論アプローチとは TEXT1-P184

社会的学習理論アプローチの定義
バンデューラは、人間の行動の形成、変容、発達に社会的諸条件が果たしている役割を重視して、従来の学習理論を発展させ、1971年「社会的学習理論」を発表しました。さらに、クランボルツらはバンデューラの社会的学習理論をキャリアの分野に発展させ、キャリア意思決定と社会的学習の関係に主眼を置いた研究を行っています。
重要
バンデューラ
カナダ・アルバータ州生まれ。1964年にスタンフォード大学教授。1974年アメリカ心理学会会長
クランボルツ(1928-)
スタンフォード大学教授。社会的学習理論に基づくカウンセリングを研究している。

学習理論 TEXT1-P185

強化
心理学では、一般に「学習」は「経験の結果生じる、比較的永続的な行動の変化・変容」と定義されています。
学習理論の一つに「学習とは刺激と反応の結びつきである」という考え方があります。
この考え方に基づいたものとして、スキナーの研究が有名です。彼は壁のバーを押すとエサが出てくる仕掛けをした箱にネズミを入れて、その学習についての研究を行いました。
ある行動(バーを押すこと)が発生する頻度を高めるために刺激(エサ)を与えることを「強化」と呼び、強化のために使われた刺激(エサ)のことを「強化子」と呼びます。また、反応(行動)が刺激を得るための道具になっていることから、このような学習を道具的学習と呼びます。
正の強化・負の強化
「エサを与える」例のように、報酬を与えることによってバーを押す反応頻度を高めることを「正の強化」と呼びます。
一方、常に床に電気が流れていて、それがバーを押すことにより止まる仕掛け装置があるとします。「電気ショックがなくなる」つまり嫌悪刺激を取り除くことによって強化する過程を「負の強化」と呼びます。
人間における強化
人間の場合、強化については正の強化、負の強化と単純に整理することができない場合が多くあります。
たとえば、あまり親にかまってもらえない子供の場合、「叱られる」ことはその子にとって「親にかまってもらっている」という正の強化になることがあります。
強化の考え方は、その人の課題となっている行動の強化子は何かをクライアントと整理することに役立ちます。
重要
強化
強化子
道具的学習
正の強化
負の強化

バンデューラの社会的学習理論 TEXT1-P187

モデリング(観察学習)
モデリングとは、他者(モデル)を観察してある行動を学習することを指します。
バンデューラは、人間の膨大な社会的行動の習得には、直接に体験しなくても、他者の行動を観察し、意識的に模倣すること(モデリング)だけでも学習が成立することを主張しました。
モデリングの過程
(1)注意過程
モデルを見る過程
(2)保持過程
記憶としてとりこみ、保持する。記憶するために、モデルの象徴的な部分を整理し、模倣するため、頭のなかでリハーサルを行います。
(3)運動再生過程
実際に行動に移してみる段階
(4)動機づけ過程
モデリング学習を推進するには、「動機づけ過程」が重要です。動機づけには、環境から与えられる「外的強化」ばかりではなく、モデルから受ける「代理強化」、自分自身で行う「自己強化」があります。
モデリングの効果
バンデューラは、3つのモデリングの効果を述べています。
①新しい行動の学習
たとえば、兄を見て、自転車に乗ることを学習すること
②制止・脱制止効果
たとえば、肺がんの人を見て、自分の喫煙量を減らすこと
③反応促進効果
たとえば、友人が復習をきちんとやることで成績が上がったのを見て、自分も復習に力を入れるようにしたこと。
自己効力
自己効力とは、自分が、ある具体的な状況において、適切な行動を成功裡に遂行できるという予測および確信のことです。また、その感覚を「自己効力感」と呼びます。

<自己効力に影響を与える要因>
(1)成功体験
成功体験は、「強力な効力感を作り出す最も効果的な方法」としています。ただし、バンデューラは、その体験の質の重要性を述べています。困難に打ち勝って成功した経験こそが、自己効力感を育てるのです。
クライアントを支援する場合は小さなステップを踏んで成功体験を積み重ねていくスモールステップ法が有効です。
(2)代理経験(モデリング)
「成功モデルを見る」、自分と同じような人が成功するのを見ることは、自己効力感を高めることになります。
(3)社会的説得
第三者や社会からの説得をいいます。
(4)生理的・感情的状態
頭痛や、倦怠感などのストレス反応は、自己効力の低下のサインと考えることができます。
感情も、自己効力に影響を与えます。肯定的な感情は、自己効力感を高め、否定的な感情は自己効力感を低下させます。
重要
モデリング(観察学習)
注意過程
保持過程
運動再生過程
動機づけ過程
外的強化
代理強化
自己強化
新しい行動の学習
制止・脱制止効果
反応促進効果
自己効力
成功体験
スモールステップ法
代理経験(モデリング)
社会的説得
生理的・感情的状態

クランボルツの社会的学習理論 TEXT1-P193

キャリア意思決定に影響を及ぼすもの
クランボルツは、バンデューラの社会的学習理論をキャリア意思決定に応用した理論を展開しました。彼は自身の理論を「キャリア意思決定における社会的学習理論アプローチ」と呼び、①なぜ人は特定の教育機関や職業を選ぶのか ②なぜ人は選んだ教育機関や職業を変えるのか ③なぜ人は職業についてさまざまな好みを表すのかなど、キャリアにおける意思決定上の課題に答える理論であるとしています。
遺伝的特性
生まれつきその人がもっている特性を指します。
環境条件と出来事
個人のコントロールを超えた環境条件や出来事があげられます。
学習経験
(1)道具的学習
ある刺激を期待して反応(行動)をするようになる学習のことです。
(2)連合的学習経験
ニュートラルな状態と肯定的・否定的な感情の反応が関連付けられた学習経験のこと。モデリングと古典的条件づけの2つのタイプがあります。
課題アプローチスキル
人が仕事や課題に対して取り組むためのスキルを言います。これには、行動基準や価値観、認知プロセス、学習の方法、情緒的な反応が含まれ、遺伝的資質、環境条件および出来事、学習経験の相互作用によって養われるとしています。
信念
クランボルツは、これまでに学んだ4つの要因が複雑に相互作用して、その人の信念をつくりあげるとしています。
(1)自己についての信念
「課題効力感」についての信念、「関心」に対しての信念、「価値」についての信念があるとしました。
(2)世界についての信念
自分が生活している世界についての信念です。
キャリアカウンセリングへの応用
キャリア意思決定における課題アプローチ
①重要な意思決定が必要な状況であると認識する
②しなければならない意思決定や課題を現実的に、かつ処理できるように定義する
③自己と世界についての信念を評価し、吟味する
④多様な選択肢をつくる
⑤選択肢についての必要な情報を集める
⑥どの情報が最も、的確で、確実性があり、実際的に意味のあるものかを決定する
⑦以上6つの意思決定行動を計画し、実行する

①このスキルを実行したり、試したりすることについて直接的に正の強化が行われること
②これらのスキルを実行するために、正の強化が行われるモデルを観察すること
社会的学習理論に基づいたクライアントの支援
(1)正の強化
(2)ロールモデル
(3)シミュレーション
認知への介入
クランボルツは、人は、信念が適切でなかったり、機能的でなかったりする場合に問題を抱えやすいとしています。
クライアントの信念が問題を引き起こしている場合は、効果的な介入を行いながら、ゆがんだ、不適切な信念であることをクライアント自身が気づき修正していくことを支援するという視点が大切です。
重要
遺伝的特性
環境条件と出来事
学習経験
連合的学習経験
課題アプローチスキル
自己についての信念
世界についての信念

計画された偶発性 TEXT1-P199

計画された偶発性
「計画された偶発性」では、予期せぬ出来事を学習の機会と捉えることを唱えています。クランボルツは「個人のキャリアは、偶然に起こる予期せぬ出来事によって決定されている事実があり、その偶発的な出来事を、主体性や努力によって最大限に活用し、力に変えることができる」と述べ、さらに、「偶発的な出来事を意図的に生み出すように、積極的に行動することによって、キャリアを創造する機会を生み出すことができる」としています。

5つのスキルを発達させる
①好奇心
②持続すること
③柔軟でいること
④楽観的に考える
⑤リスクテーキング

自分自身のキャリアの強みにするために、次の3点を理解する。
①「計画された偶発性」は、自分自身の今までのキャリアの中にあることを理解する
②好奇心に従って、「学ぶこと」と、「探し求めること」の新たな機会を得ていく
③好ましい機会を創りだすために、具体的に行動する

クランボルツは、この「計画された偶発性」が、キャリアを模索し続ける現代の現実的なアプローチであるとしています。
重要
計画された偶発性

テキスト レッスン7 意思決定論的アプローチ

意思決定論的アプローチとは TEXT1-P202

意思決定論的アプローチの定義
意思決定論的アプローチは、クライアントの抱える問題を意思決定の観点から理解し、援助をするアプローチです。
意思決定論的アプローチを学習する意義
キャリアにおける意思決定は、複雑な要素が重なり合っていることが多く、だからこそ、クライアントは専門家にサポートを求めてくるのです。キャリアカウンセラーの大切な役割は、クライアント自身が納得のいく意思決定をすることができるよう、支援すること。

意思決定のプロセスに関する理論 TEXT1-P203

合理的な意思決定論と実際的な意思決定論
1つは、論理的・合理的に最適な意思決定をいかに行うか、その方法について述べた理論(合理的な意思決定論)、もう1つは、人が実際どのように意思決定を行うかを説明した理論(実際的な意思決定論)です。
前者はカーニー、ジェラットの意思決定プロセス、後者はティードマン&ミラー・ティードマンの意思決定論
カーニーの意思決定ステージ
STEP1. 状況認識段階
心の中で違和感が生じ何か意思決定をしないといけないという感覚がわき起こってくる段階です。
STEP2. 自己アセスメント・ステージ
キャリアに関する意思決定を行うときに重要な基準を明確にする過程です。
STEP3. 探索ステージ
選択を行う過程では、正確で、包括的で、選択する事柄に関連する情報が収集されている必要があります。
STEP4. 統合のステージ
自分が希望することと自分が獲得できることとの折り合いをつけます。
STEP5. コミットメント・ステージ
行動しなければならない時、情報が必要な選択を行うときに十分な情報があつめられたときが「コミットメント」する時
STEP6. 実行ステージ
どのように進めるのかの計画には「何をするのか」「いつまでにするのか」「意思決定を支援する情報源をどのように確保するか」が盛り込まれていなければなりません。
STEP7. 再評価ステージ
再評価を行うことによって、プランの修正や希望していた成果が出せたのかについての確認を行うことができます。
ジェラットの意思決定論
初期については、理性的かつ合理的な意思決定の重要性を述べ、個人を行動の方針を決定する情報処理機械と見立て、意思決定のプロセスを研究しました。近年では、初期の理論を発展させ、合理性よりも直感などの非合理的な側面にも眼を向けています。
ジェラットの合理的な意思決定モデル
「予測システム」、「価値システム」、「決定基準」という意思決定プロセスを中心に置き、「意思決定はサイクルである」という考え方を中心にモデルを作成しました。
このサイクルを何度か繰り返すことによって、最終決定を得るというのがジェラットのモデルです。
積極的不確実性
1989年には、ジェラットの合理的な意思決定モデルを改定し、カウンセリングのための新しい意思決定の枠組みとして、積極的不確実性を唱えました。この理論の最も特徴的な点は、意思決定は合理的に行うのではなく、直感や非合理や側面(心の声)も重視して行うべきである、と述べている点です。
「未来は予測不可能であり、そしてその不確実性を積極的に捉え柔軟になるべきである」と唱えています。
(1)情報
現代においては、事実はどんどん変化していくもので、昨日正しかったものが、今日も正しいとは限らず、あいまいなものであること、また、常に人間が得ることができる情報は、すべての情報の一部、氷山の一角であるということ、情報として得られる事実は、その送り手や受け手の心の眼、つまり解釈や思いによって変化することが特徴である、と述べています。
(2)調整・再調整のプロセス
「調整・再調整のプロセス」は、つまりは「考えること」である、としています。
論理的思考によって導かれた決定は、しばしば、魅力的な決定でなかったりします。
重要なのは事実と空想のバランスであり、それを調整・再調整していくプロセスがクライアントの信念が未来を創るうえでのポイントとなると述べています。
(3)選択
直感や創造性などを使って意思決定を行うことが大切、としています。
右脳も使う「全脳的アプローチ」を奨励しています。
カウンセラーは、「その人らしい」意思決定を行ううえで必要な、クライアントが過去を振り返り、未来を想像すること、柔軟性を身につけることを支援します。
ティードマン&ミラー・ティードマンの意思決定論
ティードマンとミラー・ティードマンはパートナーでキャリア意思決定に関する研究を長年続けてきています。彼らの研究は哲学的な側面が特徴的で、論理的な意思決定よりも人間の独自性や個人のもつ力の大きさに注目してその論を展開しています。
ティードマン&オハラの意思決定プロセス
ティードマン&ミラー・ティードマンの理論は、ティードマン&オハラの意思決定プロセスを基盤にしています。
彼らは、個人のキャリア・ディベロプメントは、「アイデンティティの継続的な分化と再統合のプロセスである」とし、仕事に関するアイデンティティを規定する2つの要因を考えました。
1つは「他者からの指示・影響」です。エリクソンは「他者にとっての自分を知り、自分にとっての他者を知ることで自分自身を知る」としていることからです。
2つめの要因は、「経験」です。「キャリア・ディベロプメントは、アイデンティティの継続的な分化と再統合であり、アイデンティティは、経験によって形作られる」としています。分化と再統合の連続は人間そのものを大きくする過程でもあり、つまり、「キャリア・ディベロプメントは、自我に関する危機を解決するときに生じる」としています。
ティードマン&ミラー・ティードマンの意思決定論
現実み(リアリティ)が意思決定には重要な概念であるとしました。「もし、あなたがある方向を選ぶことが正しいと感じるならば、その感じに自信を持ちなさい。その選択はあなたにとって正しい選択になるはずです」と、個人の直感の重要性を強調しています。
意思決定論のカウンセリングへの応用
合理的な意思決定論のカウンセリングへの応用
カーニー、ジェラット初期の理論に共通しているのは、まず、意思決定をする主題を明確にし、選択肢を挙げ、それらを評価して最終的な意思決定を行おうとしていることです。
「自分の解決したいことや課題」を明確にするステップは、クライアントの意思決定を支援するうえで非常に大切であるということを、心にとめておきましょう。
合理的側面以外に着目した意思決定論のカウンセリングへの応用
ジェラットの積極的不確実性と、ティードマン&ミラー・ティードマンの意思決定論の両者ともに特徴的なのは、人間がそもそももっている力の活用を述べていることです。
人間のもつ希望や情熱がもたらす可能性を信じることを提唱しています。キャリアカウンセラーとしても、クライアントの現実性、客観的側面だけでなく、内面的な思いや、やる気を支援しながらクライアント自身が納得のいく意思決定ができるように共に歩む姿勢が大切です。
重要
状況認識段階
自己アセスメント・ステージ
探索ステージ
統合のステージ
コミットメント・ステージ
実行ステージ
再評価ステージ
ジェラット
スタンフォード大学でカウンセリング博士号を取得、スクールカウンセラー、カウンセラーとしての経験豊富で、現在は、コンサルタント、執筆家として活躍
予測システム
価値システム
決定基準
積極的不確実性
情報
調整・再調整のプロセス
選択
分化:アイデンティティがおびやかされる経験をした結果、アイデンティティがより複雑化するようなこと
再統合:分化した新しいアイデンティティを自分のものとして取り入れること

意思決定の障害(バリア) TEXT1-P217

内的な障害
不安
信念体系
自己効力の低さ
うつ状態
未決状態と優柔不断
外的な障害
経済的な問題や、人種・文化的な背景、育児や介護とそのサポート状況など制度的な問題が例としてあげられます。
重要
意思決定の障害(バリア)
不安
信念体系
自己効力の低さ
うつ状態
未決状態と優柔不断

意思決定のスタイル TEXT1-P220

カーニーの意思決定スタイル
カーニーは、自分自身や自身を取り巻く環境に関する情報入手の程度(知らない・知っている)によって、意思決定の行動を4種類提言しています。
自分自身について
知らない知っている
自身を取り巻く
環境について
知らないa.混乱型c.直観型
知っているb.依存型d.計画型
ディンクリッジの意思決定スタイル
意思決定を回避するスタイル
延期
運命任せ
言いな
弱気
意思決定を実行するスタイル
直観的
衝動的
苦悩的
計画的
リスクテーキング・スタイル
意思決定のスタイルを「リスクの負い方」という観点で説明をすることがあります。
成功祈願型アプローチ
安全型アプローチ
逃避型アプローチ
複合型アプローチ
意思決定スタイルへの対応
カーニーの意思決定スタイルと考えられる対処
スタイル課題対処
混乱型意思決定自体ができない状態受容的に話を進め、不安を軽減し、建設的な意思決定を支援する
依存型自分自身で決定を下すことに不安を覚えていたり、自発的に行動する気がない他人に決定をまかせたい気持ちを受け止めつつ、自分で意思決定をする大切さへの気づきを促す。
直観型意欲や、感覚で物事を決めてしまう情報収集を奨励し、より広い選択肢を考えるように提案する
計画型意思決定にある程度時間がかかる本人が納得できる意思決定ができるように寄り添う
重要
混乱型
依存型
直観型
計画型
延期
運命任せ
言いなり
弱気
直観的
衝動的
苦悩的
計画的
成功祈願型アプローチ
安全型アプローチ
逃避型アプローチ
複合型アプローチ